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続きまして、ミャンマーの社会一般についてご説明いたしますけれども、資料の2ページ等をごらんいただきたいのですが、大きく我が国等と異なるのが、多民族国家であるということです。ビルマ族が約7割を占めておりますけれども、国全体では、大きく分けて8民族。細分化すると135の民族があるといわれております。さらにインド系のミャンマー人ですとか、中国系のミャンマー人といったような人たちもいらっしゃいますし、宗教も、仏教が中心ですが、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教と、いったような人たちも混在しております。非常に複雑な社会と言わざるを得ないと思います。これら少数民族は、先ほども申し上げましたが、英国統治時代にビルマ族よりも上、上というのは、多分、例えば、郵便局長さんだとか、警察署長さんとか、そういったことだと思いますけれども、そういった上の位置に位置されたがために、急にビルマ族を中心として国家統一だといってもなかなか納得しないということで、そういった内政的な問題を抱えているということを常に頭の片隅に入れなければいけないと思います。

それから、特に西欧から問題視されているのが麻薬の問題でございますが、確かに山岳地域に行くと麻薬をつくっています。私も見たことがございますが、道がないような地域でつくっておりまして、生計を立てるのに手っとり早い方法が麻薬を栽培することだということなんだと思います。これも相当根が深い問題でして、そもそも中国にアヘンを売るためにこの辺で麻薬をつくり始めた。要するに、イギリスが持ち込んだといわれておりますし、さらに、冷戦の前では、いわゆる共産主義の中国の南下を防ぐために、そういった麻薬グループにアメリカが武器を渡して援助したというのも事実だと思われます。今、麻薬問題を最も批判しているのはアメリカですけれども、ミャンマー政府が頭にくるのも実はそういった点にあるようでございます。

ミャンマー政府は、現在、かなり真剣に麻薬の撲滅運動をやっているようです。ただ、それらを栽培しているような山岳民族の生計も同時に考えなければならないということで、麻薬とは違う植物を勝手にポンと持ってきていくらつくっても、それをまた市場に出さなければいけない。麻薬であれば、道なき道を買いに来てくれるわけですけれども、普通のトウモロコシだとか、あるいは何かつくったとしても、だれも買いに来てくれません。じゃあ、道をつくらなければいけませんねということになるんですが、道の援助等はできないでいる。それでも我が国も何かしなくてはいけないということで、現在、麻薬関係のJICAの専門家の方が行っていらっしゃいますし、肥料や農機具といったものについて援助を行ったり、あるいは栽培の転換の技術協力を行ったりしております。

それから、社会関係で医療と教育関係について簡単にお話しいたしますが、今、ミャンマーの最もおくれた点の1つが医療厚生関係だと思います。乳幼児死亡率は、1,000人中72人というような数字があります。日本では、1人とか2人とかだと思います。それから、さらに6歳ぐらいまでに死んでしまう子供の数まで入れると、1,000人中大体1割から2割は6歳ぐらいまでに亡くなってしまう。病院も大変おくれております。ヤンゴン総合病院がミャンマーでは一番よい病院ということになっておりますが、そこを見に行きましたけれども、何というか、野戦病院みたいな感じでございます。

こういった分野では、政治云々関係なしに、早急に人道的な観点から援助を行っていく必要があるのではないかと思いますけれども、政治状況等から、こういった分野ですら反対する人はたくさんいらっしゃいますし、先ほどのスー・チー女史も反対しているということでございます。

それから、教育関係ですが、資料の6ページにメモを書きましたけれども、ミャンマーでは、義務教育といったものがございません。ただ、教育熱心ということもあって、入学率はそれなりにあるようです。済みません、入学率の数字がないんです。ただ、小学校、これは4年生が小学校ということになるわけですが、小学校を卒業するのが、わずか28%、残りの72%はドロップアウトしてしまうということです。原因は、経済的な困難ですとか、家庭内労働があるとか、あるいは健康の問題ですとか、親の無理解ですとかあるようですが、大きな問題としては、カリキュラムがかなり詰め込み式で、毎年毎年試験を受けてそれにパスしないと上に上がれない。幼稚園児でもそういうことだということでございます。幼稚園児でも、週35時間勉強しなくてはいけないし、ミャンマー語だとか、英語も1年生から勉強させられるらしいですが、まだミャンマー語もろくに話せないような子が英語を勉強しなくてはいけなくて、さらに、地方に行けば少数民族語も勉強しなくてはいけない。ある程度点をとらないと上に上がれないというようなことで、かなり問題があるようです。現在、JICAの専門家の方がカリキュラムの見直しに行っていらっしゃいます。

ただ、こういった状況ですが、識字率は88%と、タイとか中国よりもかなり上の状況にあります。

 

 

 

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