日本の5.08倍の1,919,317km2という広大な国土を有するインドネシアは、島嶼国とはいえ人口1億9,375万人(95年央)を擁し、豊富な森林を持ち、農業に適し、石油、天然ガス等の天然資源、更には海洋資源にも恵まれかつ熱帯果実の宝庫でもある。
アジア通貨危機直後より国民総生産(GDP:95─6年2,274億ドル規模)で一人当たり国民総生産:GNP per Capitaも96年1,134ドル規模であったものが、1/10に低下。失業者は98年末2,000万人規模に達する見込みで、政情不安に加え社会不安の要因すら内包している。華僑資本の復帰は引き続き困難性を極めている。通貨ルピアは10月15日現在2月来の高値1ドル7,300ルピア(9月末9,600ルピア)に回復した。
インドネシアは、アジア通貨危機直後、タイ、韓国とともにIMFの指導と融資を受け、緊縮財政政策を実施し、反面、景気回復の足を引っ張っているとの反省もされている。
インドネシアの対外債務は約1,300億ドル規模。うち民間企業分が半分の約650億ドルにのぼり、80年代の中南米債務危機が政府の借り入れ主体であったのと異なり、アジア新興諸国の場合、インドネシアも含めて民間債務の処理が急務になっている。
アジア通貨危機が短期外資の一時膨大な流失にあった反省に立って、インドネシアでも「チリ方式の短期資本規制を検討」などと噂が流布されている。マレーシアではいち早く固定相場制による通貨管理規制体制が敷かれた。この外資規制問題は98年11月中旬のクワラルンプールでのAPEC会合でも討議された。
チリで1991年に導入された規制は「エンカヘ」と呼ばれ、海外から短期資本が流入する際にその一定割合を中央銀行に無利息で強制的に預託させ資本流入を防ぐ仕組み。低い貯蓄率や外資依存体質のある国では、ファンダメンタルズの弱さを規制では補えないとの声もあり、市場では、「規制導入の前にマクロ経済の安定が必要」との声が上がっているが、国際機関等から支持の声もある。
我が国では、いち早くアジアに対する300億ドル(11月中旬APECでの米国アジア支援10億ドルも加味して(新)宮沢構想とも呼ばれる)の支援を提唱し、インドネシアを含むアジア新興諸国の貸し渋り等不況原因の払拭に努力している。また、政府は、同APEC首脳会議がアジア域内金融システム安定化で合意したことを踏まえ、12月に入って東南アジアで中小企業の資金繰り支援に乗り出す意向を表明。インドネシアでは2─3兆円規模の信用保証協会を設立する方向で調整している。この仕組みでは日本輸出入銀行がアジア開発銀行などと共同出資する方向。
対ASEAN主要5カ国への海外からの直接投資は、1─9月期投資認可額(米ドル換算)で合計で245億ドルと対前年比46.5%減った。これに対応して5カ国では海外投資を呼び込むため規制緩和に乗り出した。