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これについては国別調査報告のとおり幾多の外航海運規制及び自国船保護政策の腹案もあり、真の海運自由化を図るには難しい問題が内包されている。

マレーシアでは政治と海事行政組織が外貨を稼ぐ観点から直結し、アジア通貨危機で海運の自国船優先政策が特筆されてきたことは大きな問題である。MIMA(MARITIME INSTITUTE OF MALAYSIA)の運輸省当局への影響力は低いとおもわれる。

インドネシアは、行政組織は確立している。極端に低い自国船積取実績、周辺諸国海運が所得税を免除されている関係から早急に競争条件を統一するとの理由で海運法人税を廃止する腹案があり他の部局へ働きかけているがその影響力は低い。

台湾は、もともと先進海運の域に達した海運行政組織と知識を持っており、規制緩和(deregulation)で古い海運保護体制を払拭する動きが示されている。台湾は国際機関との関係では阻害されることもあり、WTO海運自由化交渉に強い関心を示しつつも参加できない問題がある。

 

第6節 海運政策:

 

〈世界は国境のないモノ、カネ、ヒトの国際的な流動化が急激に進みつつあり、1960年海運政策体制を打破するには国際場裏での息の長い対話が必要になろう。〉

今回の調査対象4カ国であるインドネシア、マレーシア、タイ及び台湾でも、以下に略記するとおり、1960年代の海運保護法・行政体制と人材に基づく海運政策の考え方は強い。

これらに対し、台湾を例外としてASEAN諸国の多くは海運未発展段階との認識に立ち政府の海運保護政策が必要との考え方に立って海運政策を進めている。海運自由化アクセス手続きにつき、ASEAN事務局、WTOへの諸国の報告どおりには受け取り難い。

かかる国際場裏での手続きこそが海運自由市場化を進めて行く一つの手段であると思われ、それらの継続的な対話の場を保持して行くことが強く望まれる所以でもある。

国家海運企業にしろ、船舶建造補助にしろ、相手国が政策としてかつ自らの財政措置によって、国際海運市場に参入してくる場合の対抗措置は難しい。

 

 

 

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