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しかしながら、折からのDeregulation、Privatization、Decentralizationの波は、財政負担度がより高い開発途上諸国自らの問題でもあり、要すれば、当該開発途上国の他の分野との優先度との兼ね合いや、非効率性の問題を克服して何処まで財政負担に耐えて行けるかどうかの問題に帰着しよう。但し、如何なる国家海運企業と言えども、財政がかえの競争条件不統一の問題はあるも、海運市場では自国船優先のない自由化アクセスを容認することが求められる。

調査対象4カ国共通に国家海運企業を抱えている。インドネシアDjakarta Lloyd(政府系)、Admiral Lines(海軍系)の2社。マレーシアでは唯一独占化が進められているMISCがある。タイではTMN1社(民営化模索中)に加え国営海運企業創設を海事当局が支援する意向が伝えられている。台湾では陽明海運公司(Yang Min Marine Transport Co.)が1996年に民営化されるも台湾航業公司(Taiwan Navigation Co.)が現在も国営で存続。

マレーシアのMISCは98年末その傘下に海運3社を併合し、139隻330万重量トン船腹体制となった。商社奨励策による自国船積み等の海運諸政策と相俟って国家海運企業として益々脅威となることが予想される。

(2) 民間海運企業の発展:

今次調査を通じて、インドネシアにはSamudera Shipping、タイにはRCLと言う民間企業が海運に自由市場化を強く信奉して力強く育ちつつある姿を拝見した。台湾では長榮海運(Evergreen Marine Co.)が知られるところであり、民営海運企業の公正な自由競争による発展を見守る必要があろう。

 

第5節 海運行政体制

 

〈海運行政組織と優秀な人材が1960年海運政策体制のままで開発を進める危険は大きい。国際場裏における海運市場自由化対話の必要が強調されよう。〉

インドネシア、マレーシア、タイ及び台湾では、共に確たる海事行政組織があり、優秀な人材も擁している。海運の自由化には対応する一方で、開発途上の自国海の育成のために旧来の海運法・政策体制の考え方に立って政策を進めることは控えて欲しい。

タイでは、また、別途海事分野で勢力のあるPort Departmentがあり、OMPCの政府内での意思決定上の発言力が低く、これを改めるべく意思決定に参画しうる改革を進めつつある。

 

 

 

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