世界商船隊の船腹量は、96年8万4,264隻─5億787万トンにのぼり、このうちアジアが2万1,986隻─9,246万トン(18.2%)を占める。調査対象4カ国の保有船腹量は4,324隻─1,536万トン(世界に対し3,0%、アジアの中で16.6%)の内訳となっている。
しかしながら、世界に羽ばたける商船隊は台湾だけであり、インドネシアなど自国海上貿易の僅かに数%の実績しか自国商船隊で運送し得ていない。タイが10%そこそこ、マレーシアが15%、台湾が20%弱の状況。
かかる諸国の状況に鑑み、台湾を除き、諸国では「海運が発展段階」と見て、今後も鋭意海運開発を進める意向にある。
諸国の海運がそれぞれの望まれる発展を遂げるまでには、国家財政負担を伴う場合にはアジア通貨危機での財政制約もあり、また、極度に近代化された世界規模の先進海運との競争の下で進出する膨大な投資と技術・ノウハウを考えると隔絶の感がある。
ともかく、海運自由化プログラムがASEAN、APEC、WTOなど数ある国際場裏の中で進められているが、調査対象ASEAN3カ国の海運に未だ充足感はなく、海運の銃火を認識するに至っていない。調査対象4カ国では、1960年代の古い海運体制と政策・考え方が存在しているとおもわれ、その認識には未だ道遠しの感じであった。
調査対象諸国は、台湾がWTOのメンバーでないが海運自由市場化に積極姿勢にある。マレーシアはともかく海運自由化プログラムヘの参画は自主的(マレーシア)であるべしとしつつもWTO交渉を容認しているところであり、諸国の海運自由市場化は否応なく討議・審議が進められるし、この様な場こそ今後重要になろう。
第4節 船社体制:
(1) 国営海運企業の問題:〈国営海運企業であること自体への指弾は困難?〉
1964年国連貿易開発会議(UNCTAD)が国連総会の下に置かれ、同海運委員会及び同国際海運立法部会(1974年国連定期船同盟慣行規約採択後何れも解散)並びに各年代の国連開発戦略10年の中で、開発途上諸国の海運が国家企業であることは甘受されてきており、今更これを問題視はできない。