アジア通貨危機以後の同国の外資管理政策は外資導入を拒否する体制とも覗われ、外貨獲得またはその流出をセーブする政策の一つとして海運を対象とする動きとして懸念される所以でもある。
MISCは、もともと国策に則り、世界海運に比肩しうる実力を備えつつあり、商社を介した自国船積み誘導政策が背景にあることを考慮すれば、98年12月同国の不定期、タンカー3船社の買収手続きの完了に伴う今後の動きは注目される。
同社は、現在、潤沢な資金を有するマレーシア国営石油会社ペトロナスの実質子会社として、主力の定期船事業に不定期船・タンカー部門(ノンライナー部門の強化:バルカーやLNG等50隻、160万重量トンを取り込む。)を加え、海運3分野で139隻、339万重量トンの船隊を運航する東南アジアの有力な総合オペレーターに衣替えしている。
(3) タイ
タイの自国船輸送実績は、1997年10.9%程度で推移している。
タイ側の回答では、海運政策一般として一番目の「東部臨海港湾の全面使用化やその他適地深海港湾の建設」に次いで「海上輸送及びその輸送システムの促進」が挙げられており、(前)事務局長Mr.Roongrit(9月末定年退職)自ら発展段階の質問の項目で「タイの海運をどの様に見ているか」との質問が逆にあり、当方よりは「ASEAN諸国では遅れている」と見ている旨回答したが、ともかくタイ海事当局は国営海運企業を更に1社創設してでも、自国の海上貿易に一定の対応ができる自国海運の開発・育成をしたいとの意欲がひしひしと感じられた。
タイには、TMNという国営海運企業が存続(民営化を模索中)しているのに加え、国営海運企業の創設支援を海事振興当局が公言している。同国の質問票への回答において海運企業への補助金の支給を明確に回答してもいる。政府手配貨物の自国船積みも知られるところである。(邦船社アンケート回答)
同国では休眠法案といわれる未公布の海運規制法案「Business of Marcantile Maritime Act」があり、荷主協会(TNSC:Thai National Shippers Council)の政治的圧力で政権が交代するたびにその復活を図る動きがあり、邦船関係者などの間で懸念の材料となっている。
同国の海運は、内・外航ともにASEAN諸国の中では引き続き後れをとっていること内外ともに認識されるところである。