一方、タイでは、荷主協会の圧力によって政権が交代する度に出てくる定期船同盟運賃規制などを内容とする海運規制法案の問題が引き続き残されてはいるが、海運の基幹航路から離れASEAN諸国では海運後発の段階にある。
マレーシアでは、基幹航路のHUB PORTシンガポールでの自国貨物の船積みが自国海運発展の阻害要因視されているが。これへの対応と、また同国の極めて高い貿易依存度(2/3割強)もあり、商社を通じた自国貨自国船積みの奨励が自国船優先政策のひとつとして採られている。この政策は、同国がアジア通貨危機以後とった外資規制管理(外資に門戸を閉ざしそれに頼らない)政策の一環としての海運保護政策と考えられる(後刻当政策は廃止された旨確認)。
これら諸国の海運育成保護政策は、法制及び予算制度等と一体のものとして体制化されているだけに、一朝一夕には払拭しにくい側面を有しているものと判断される。
調査対象4カ国の海運保議政策の状況は次のとおり。
今回の質問票に対する回答では、海運企業に補助金を支給している国はマレーシア、タイ及び台湾の3カ国(インドネシアなし。)、所得税を免除している国はマレーシア、タイ及び台湾の3カ国。但し、インドネシアでも、海運企業課税は国際競争条件上不利として今後免除必要としている。
政府手配貨物の自国船積みを義務付けている国は対象諸国で共通(台湾は不明)に適用している。要すれば、アジア諸国には、保護規制の強弱の差はあっても依然として旧来の自国船優先(国旗差別)政策が現存し、又はその残滓が残っているといわざるを得ない。
(1) インドネシア
インドネシア国籍船の海上輸送実績は近年数%(極く僅少の2-3%程度)で推移しており、一方で支配下の外国籍船の用船も全くない(水野委員コメント:実際には多くの定期用船あり)としている。
インドネシアでは1980年半ばまでSKUという船舶の入出・積み荷・揚げ荷の許可制度が続き、折からの国一律の規制緩和政策によって海運規制が撤廃された。現在、先方海運当局との対話では一切の海運規制はないとしている。