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その他、外航海運を国営企業として運営する形態もある。この場合、海運企業経営自体が採算を採るにしても国家財政の下で運営されることになる。国営海運企業(national Shipping Lines)は、アジアを含めた開発途上諸国や社会主義諸国で今なお見られる形態である。海運の国営企業形態は、少なくとも国際場裏において先進海運諸国はこれを甘受せざるを得なかった。

外航海運は、保険及び観光と同じ範疇に属し、他国での港湾料金を含め外貨の収受を伴う貿易外(invisible trade)収支部門に属し、外貨収受が国の重要な発展要因であるだけに、自国貿易の相当部分は自らの船で運びたいという意向を強め、海運の国有や海運の保護政策が俎上に上ることとなってきた。

このような国営海運企業問題は、現在、国連アジア太平洋経済社会委員会(U.N.ESCAP、バンコク)など国際場裏でも、採算を度外視した放漫な経営になり勝ちであるとの反省に立ち、何よりも国家財政の過重な負担の軽減の観点から、採算重視でより効率性を重んじる市場自由化の一環として、「規制緩和」「国営企業の私企業化」「中央集権の地方分権化」の波に晒されてきてはいる。

 

2. 調査対象4カ国の海運保護政策

今回の調査対象4カ国であるインドネシア、マレーシア、タイ及び台湾の何れの諸国も、戦後、鋭意自国海運の育成・発展に努力してきた国々であり、今回の調査でも自国海運の育成発展に向けての意欲は諸国共通に相当なものがあった。WTOサービス自由化など国際場裏の海運市場自由化の大きな潮流にさらされ、今更引き返せない事態(その流れに乗らなれけば国際場裏でとり残される状況)にあっても、諸国に程度の差はあれ、当時の海運保護政策の残滓が陰に陽に影をさし、引き続きその残滓に頼って海運の政策展開をせざるを得ない状況と理解された。

例えば、調査対象4カ国では、所得税の免除(インドネシアを除く。ただし、同国も免除を検討する意向)等によって国際競争力を保持する施策をもち、国営海運企業は残存している。タイでは既存1社に加え、さらに海運国営企業創立案が出ている。

自国貨自国船積みのような自国海運優先政策についてインドネシアでは、1980年代半ばまでの外国船の出入港・積み荷積み下ろし規制(SKU)をもって自国海運の保護育成に努力した時代があった。当調査では同国は特段の海運を規制する政策はないと明言。同国の自国船による積取比率は低く数%の状況にある。

台湾は近年の海運規制緩和政策によって海運規制はないと回答している。

 

 

 

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