第3節 アジア通貨危機以後の経済・貿易(新聞情報)
1. IMFによるアジア諸国支援とマレーシアの外資管理政策
アジア通貨危機に突入後、タイ、インドネシア、韓国はいち早くIMFの支援管理下に入り、我が国をはじめとする米国、欧州も加わった金融支援策をもって急場の危機は脱し得た。
マレーシアは、もともとマハティール首相の下で独自民族資本による経済開発を進めてきた国であり、アジア通貨危機に対しいち早く外資に門戸を閉ざし、外資管理方式による自国通貨リンギの防衛手段に走った。マレーシアは、今次調査対象国でアジア通貨危機後、商社へのインセンティブを通じて自国貨自国船政策を強化するなど海運の保護政策を唯一強めた国となっている。
2. アジア諸国経済の現状:IMF指導下の景気刺激策
マレーシアはリンギ固定下の外資管理体制景気政策
IMF指導体制下の優等生ともいわれるタイ、インドネシア及び韓国でも、旧来のIMF緊縮財政政策の反省もあって、若干でも景気刺激型の財政出動が必要との認識に立つに至った。財政出動が可能なアジア諸国では、例えば潜在的に農業開発の可能性を秘めるタイでは基本的な経済開発手法に立って農業振興をより一層進める施策が実施に移されつつある。
アジア通貨危機の影響を受けた諸国のうちインドネシアでは、民間外資導入の比重が極めて高かったため、引き続き国際民間金融機関との間で債権放棄及び返済計画見直しの話し合いを進めている。インドネシアの経済回復は、テンポは遅いが着実に負の経済成長の中で何とかその幅を縮めるところまで見通せる段階となっている。
マレーシアは、外国金融市場規制の問題点が米国などの指弾にさらされつつも、米国のヘッジファンドの破綻もあって、何らかの外資移動に関する情報の公開が必要であるとして、98年11月中葉のAPECクワラルンプール首脳会議などで国際的に認識される雰囲気を醸成する一方、マレーシア自体の対ドル通貨リンギの固定相場制への移行を含む通貨管理規制政策と景気刺激政策は暫時一定の成果をあらわしていると評価されるに至っている。
これらアジア新興諸国の不況脱出には、我が国自体の消費の拡大が引き続き必要であるが、我が国としても宮沢構想による300億ドルというアジア金融支援(米国の10万ドル支援も加わり新宮沢構想という)及び輸出保険等の金融保証制度により、アジア諸国の窮状を支えるべく進めている。