海運自由化市場で発展しつつある諸国の海運企業に対しては、海運自由化で育ちうるよき先例でもあり、諸国における海運自由化気運・環境を構成してゆくためにも、これら民間海運企業の成長を温かい目で見守り育てて行くことが肝要であろう。
開発途上諸国の海運は、国営企業として発足した経緯がある。調査対象諸国何れにも引き続き国営海運企業が存続している。国営企業の存立は国家財政負担とのせめぎ合いでもある。グローバル化されている国際海運の下で親方日の丸的経営が極度に合理化され国際提携の進んだ海運と競合して行くには、国家財政の全面的支援でもない限り、不可能であろう。
《海運自由アクセスの必要性とその効能》
調査対象諸国との間で、本件調査を通じ、国家財政負担の軽減にも関連して、折りからの「規制緩和」、「国営企業の私企業化」及び「地方分権化」の国際的動向を紹介。公正かつ自由な海運競争の保持(海運取引きへの政府介入の排除)が何故必要かについて、最善ではないにしても最良のものとして、民間活力(起業家entrepreneur)の発想の必要性と競争原理に基づく「合理性ある料率・運賃」、「適正・快適かつ適正頻度のサービス」及び海上安全・環境保全施策への投資の確保が国家財政の負担が軽減しうる形で合理的に確保する方策である旨紹介しておいた。自由競争市場は一般には強者の理論としてうけとられるが、逆に新規市場参入者にとって自由市場システムはなくてはならない原則である。既往の市場に保護規制障壁があると入り口で新規市場参入者は排除されないことが重要である旨、後刻確認した。
とりわけ、マレーシアがアジア通貨危機以後顕著に示した「商社インセンティブを介した自国貨自国船政策」は緊急やむない措置としても、早晩撤回されるべき政策であると了解する旨明確な意思を伝達しておいた。
《グローバル化と海運自由アクセス》
グローバル化された国際社会、政治、経済の下では、海運自由化アクセス手続きは諸国にとって今や避けられない国際動向であり、「モノ」及び「観光・保険など海運以外のサービス」の分野同様に、諸国がこれに孤立して存続することは困難な情勢にある。調査対象諸国においても海運自由化アクセス手続きに否応なく従わざるを得ない状況を拝察した。
国際場裏での海運自由化アクセスについて、WTO手続きは加盟国としての義務(インドネシア)と述べた国もあり、APEC手続きはWTO手続きとの重複を避けるべしとして不要(マレーシア)とする国、WTO、APEC共に国際協調を尊重して行く姿勢を示したタイ、国際機関活動から離されている環境下、国際場裏参画意欲の強い台湾など様々であった。