〈調査報告〉
【所感と提言】
《諸国政府の海運開発意欲と海運政策》
アジアでは、1980年代後半以降驚異的発展を遂げたアジア新興経済諸国の経済、貿易の発展に見合う海運の発展が概して遅れている。調査対象4カ国の全ての海運当局は、国際気運を含めその置かれている社会、政治、経済環境の中で、それぞれ満足しうるレベルの自国海運の発展を目指し、ある国(マレーシア)では海事法制改正の気運をうかがいながら既往法制・政策を駆使しつつ、鋭意その開発施策を駆使して努力を傾注されている。
アジア海運が国際場裏での海運自由化アクセス手続きにおいてイニシアティブをとって行くには、アジア開発途上諸国が先ずそれぞれが満足しうる一定の海運開発を遂げる必要があろう。
これに関して、とりわけ、新規に包括的海事法制化を進めているマレーシア及び海運施行細則が未制定であるインドネシア、タイOMPCの国家意思決定参画強化施策及び更なる国営海運企業創設に支持を表明する政策、並びに台湾の海運自由政策に関して、APECにおいて我が国がイニシアティブをとっている諸国の海運政策・法制等の「透明化」手続き(調査対象諸国は総じて支持を表明)等を通じて注目し、健全な海運政策の実現に資して行く必要がある。
これには健全な海運施策を目指す諸国の「痛み」に対し、少なくとも我が国の諸国に対する可能な海事分野への協力姿勢(事実、沿岸海運整備、船員教育、船舶の安全分野など協力可能分野も多い)が必要であろう。
《海運の発展段階の差異》
調査対象4カ国の中でも、海運の発展段階に著しい差異が認められ、インドネシア及びタイの海運は、Samudera Shipping及びRCLなど民間企業が海運自由化市場原則の下で頼もしい活力を発揮しつつあるが、総じて発展段階の遅れが是認される。
インドネシアは、とりわけアジア通貨危機の影響から政治不安をも惹起し、その立ち直りの遅れが顕著である。マレーシアのMISCは政府の全面的支援体制の下で今や定期船、不定期船及びタンカーという総合海運会社として世界海運に飛躍しうる実力を備えるに至った。タイにはIntra-Asia海運で頼もしい発展をしつつあるRCLがある。台湾は経済面でいち早く奇跡の発展を遂げ、海運でもEvergreen Shippingなど従来より世界海運に独立独歩を確立している。