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1) 取引当事者間のルール

1-1 契約締結に関するルール

1.1.1 電子的手段による契約を有効とする取り決め

当事者間でもっとも大切な取り決めは、電子的手段によって取り決めた契約が後日有効でない、とされるような事態を防止する事にある。わが国では、訴訟法上の証拠に関する規定は裁判官の自由な心証によるとされているため、電子データである事のみをもって契約成立の証拠として採用されない危険は少ない、と言える。しかし、データの信頼度をどのように評価するか、は裁判官の心証による、と言う事は、その信頼度が低いと判断された場合には、証拠として採用されない危険が存在する、と言う事であり、後で述べる公証・認証に関してどのようにするか、という事と関係がある。

更に、外国の法律では、証拠は文書ないし書面に限る、としているもの、一定金額を超える商取引にあっては文書の作成を義務づけるもの、等があり、紛争発生時に契約が有効に成立していなかった、とされる可能性がある。これに関し、ボレロは当事者間の取り決めをもって相互に、有効性を争わない事、証拠能力を否定しない事、を約束せしめ、安定性を確保する、としている。

この方法で完全か、といえばそうとはいえないかもしれない。巨額の紛争ともなれば、当事者はルールブックの約束を反故にするかもしれない。だが、電子社会において、世界的規模の電子商取引媒介グループから除名される危険を冒すほどの価値があるか否か、が大きなファクターであろうと思われる。電子商取引の始まりは関係の強い取引き先から開始されようが、取り引き範囲が拡大された場合、現行の紙と署名による取り引きの場合以上に相手先の信頼度を考慮する必要がある。

1.1.2 契約成立の時期に関する取り決め

次に契約はいかなる時点で成立したとするか、を明確にしておく必要がある。

国際貿易は、国境を越えて行われ、わが国の民法で言う「隔地者間」に相当する。民法では、「隔地者間の契約は承諾の通知を発したる時」に成立することとされている。(民法526条) 概ね各国の法制はこの「発信主義」に基づくと考えられるが、万一を考慮すると、これを取り決めておく事が望ましい。また、承諾を必要としない場合に民法は「承諾の意思表示と認むべき事実ありたる時」に成立する(同条2項)としているが、何らの意思表示なく自動的に契約を成立させる場合、その成立時期を予め取り決めておく事が望ましい。

 

 

 

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