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CMI規則においても、電子式船荷証券の定義を述べていない。便宜的に、このような用語を使用しているのである。一応、これによってカバーされている海上運送契約、いわゆるヘーグルールの一般的な対象である個品運送契約を前提としている。そして、流通性船荷証券が貿易取引で使用される理由は、個品運送貨物の売買の場合には、裏書きして転々と譲渡することができるというよりも、売主の立場からは、これによって権利留保を行って、買主の代金支払を確保したり、買主は、これによって物品引渡請求権を取得し、また、銀行は、これによっ担保権を確保し、さらに、運送人はこれと引き換えに貨物を引き渡すことによって、船荷証券を所持しない者の引渡請求に対して抗弁することができるからである。CIF契約では、売主が運送人と運送契約を結ぶのであるから、当然、契約当事者として、運送人を訴えることができる。しかし、CIF契約の買主、その他の譲受人も、船荷証券に基づいて、運送人を訴える権利(運送契約上の権利)を取得する。このようなことを前提として、船荷証券の電子化を考えていく。

ここでは、個品運送を前提として話をしているのである。ところが、電子式船荷証券に関するCMI規則の解説書などを読むと、裏書譲渡によって運送中の貨物が転々と売買されるのは、傭船契約によって運送されるバルクカーゴの場合であり、個品運送契約による貨物の場合には殆どみられないので、同規則は、主として前者の場合に適用される、と言うような説明がある。そもそも、最初に船荷証券の電子化の話がでてきたのは、コンテナ輸送に伴う荷役時間や航海日数の短縮による、いわゆる船荷証券の危機を解決するために、船荷証券の電子化であるとか、海上運送状の導入が問題になったのである。1970年代後半に、ヨーロッパの船会社が、Air Waybillにならって、Liner Waybillを導入した。文字通り、定期船による海上運送状であるが、後に、「航空」運送状に対比して、「海上」運送状という意味で、Sea Waybillと呼ばれるようになった。しかし、電子式船荷証券に関連して、流通性(negotiability)の問題に移ると、裏書譲渡による転売可能性とその手順が中心となって、上記のような結果になってしまったのではなかろうかと考える。傭船契約の場合には、傭船者と船主(運送人)との間の個別的な運送契約に基づく権利義務関係で、海上物品運送が行われるのである。これに対して、ヘーグルールは、海上物品運送に関する船荷証券またはこれに類似する権原証券により証明される運送契約に対してのみ適用されるのである。ただし、同ルールは、船荷証券の定義を規定していない。前述のように、CMI規則も、電子式船荷証券の定義を規定していない。

 

 

 

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