日本財団 図書館


(5) 物権への不言及

船荷証券は、大陸法では物権的効力のある有価証券であり(商法575条、776条、国際海上物品運送法10条)、英米法では権原証券であって、いずれにせよ、その占有移転は、運送品引渡請求権および運送品支配・処分権という債権を移転させるにとどまらず、運送品自体の占有移転の効果をも生じさせる。しかし、船荷証券を使用しない場合、物権移転(運送品の占有移転)をいかなる方式で生じさせうるかについて、各国の物権法は異なっている。

CMI規則は、すべての国で運送品の物権移転を生じさせる形で国際的統一規則を作ることは困難であるとして、それを取り扱うことを最初から断念した。したがって、本規則に基づく取引は、船荷証券を用いた取引とまったく同じ効果を生じさせるとは限らないのであって、本規則の表題にある「電子式船荷証券」の語は、誤解を生じさせるおそれもある。ただ、通りがよいであろうとの理由から、最終的にその表題が採用された。

 

6. CMI規則で想定されている取引

CMI規則は、海上部分を含む運送契約であれば如何なるものでも対象となりうるように作成されているが、主としてバラ積み貨物に使用されることを予想して作成されたものであると説明されている。また、個品運送貨物については、運送品支配・処分権の一度限りの移転を認める「海上運送状に関するCMI規則」で十分であるとも言われている。果たして、それでよいのであろうか。この点について、若干コメントを述べてみたい。

かつて、CMIのSea Waybillに関する小委員会において、委員長(英国人)が、船荷証券の電子化に関する規則が必要であるか否かとの質問に対して、次のような意味の説明をしている。まず、船荷証券からSea Waybillへ移行して、それがある程度定着してから、船荷証券の電子化が可能になるのではなかろうか。このような順序で、現在の紙の船荷証券から電子式船荷証券へもっていく。そのような意味でSea Waybillを過渡的なものとして導入するのである。つまり、Sea Waybillという紙の書類を持っていても、それは権利の留保、譲渡、行使等に使用されるのではなく、単に運送貨物の情報を伝達する手段に過ぎないのである。このような運送書類が一般に普及してから、電子式船荷証券の問題を取り上げたほうが、受け入れられやすいであろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION