はならないこと、また3]個人キーの善意の譲受人に、従来の船荷証券のように、運送人に対する貨物引渡請求権をはじめとする運送契約上の権利が移転されるようになっている場合に、中央登録機関の承認がないまま第三者に個人キーが詐欺的に移転される可能性を排除できないこと等である。
CMI規則は強行法規ではないから、受取メッセージと個人キーで構成される電子式船荷証券が従来の書面形式の船荷証券と同様の効果をもつという規定(同規則第7条)だけでは、書面形式の船荷証券と同様の法的効力を付与することに問題があり、そのためには関連法の制定が必要になる。また、CMI規則では、運送契約の約款などは全部伝送することなく、既存の書面形式の船荷証券に記載されている約款を参照せよというように、レファレンスする形式で情報を伝送することになっており(同第5条)、また、当事者は当該契約が国内法によって要求される書面によるものではないことを抗弁として主張することができないこと(同第11条)になっている。これらの点から、各国の船荷証券に関連する国内法がこの規則の効力を認めない恐れが多分に考えられる。
(4) CMI規則における登録機関
本規則では、運送契約に関するデータを保存・登録し、現権利者からの通知を受けて新権利者にデータを伝送する登録機関に、運送人がなることになっている。作業部会では、最初は登録機関に銀行を想定していたが、1982年にチェース・マンハッタン銀行が構想し、参加者に呼びかけていたSEADOCシステムという構想でも、登録機関は同銀行であった。しかし、SEADOCシステムが挫折したのは、資金の流れと物の流れが銀行に把握されるのを企業が嫌がったからであるという点について、CMI作業部会の意見が一致し、運送人が登録機関となる方が企業の抵抗が小さいであろうとの判断になったからであるという。また、運送契約上の債務者である運送人に対して権利移転の通知がなされるシステムは、法的にみれば、第三者(銀行)に対して通知がなされるシステムに比べて、指図による占有移転(民法184条)がなされたと法律構成しやすいというメリットもある。
しかし、1]経済的観点から、運送人が当該システム構築に要する資金的負担があり、2]運送契約の当事者である運送人が登録機関になると、データを自己の有利に改ざんするおそれがないかという問題がある。二番目の問題は、技術的な方法で改ざん防止を行うことが可能である。