これらのシステムは、仕向港に到着した船舶から貨物を迅速に受け戻すために、海上運送状に類似した運送書類のEDI化を試みたものである。しかし、原料・燃料・食料等のいわゆる国際商品の取引では、しばしば海上運送中に積荷の転売が行われることがあり、このような取引は、運送書類の「流通性」という機能を抜きにしては、実施することが難しい。そこで、船荷証券の原本性、唯一性、真正性、完全性等に関する電子的等価物を商業的に実施するためのプロジェクトが検討された。
これらのプロジェクトの中に次のものがある。チェース・マンハッタン銀行(the Chase Manhattan Bank)の"Seadocs-scheme"(1991年);万国海法会(CMI)の「電子式船荷証券に関するCMI規則」(1990年);国際独立タンカー船主協会(INTERTANKO)の"Electronic Data Interchange Re: Bill of Lading for Oil Cargoes"(1990年);米国貿易手続簡易化機関(NCITD)の電子式船荷証券(1990年);BOLEROプロジェクトの電子式船荷証券(1995年)等がある。そこで、NCITDの電子式船荷証券について、以下に説明する。
(4) NCITDの電子式船荷証券
イ. 電子式船荷証券に関するNCITDの提案
海上運送状のEDI化によって達成できなかった「流通性」(negotiability)を如何にして電子化するかという試みがこれまでに行われてきた。即ち、現行の流通性船荷証券のもつ1]貨物の受取証、2]運送契約の証拠、3]権原証券という3つの性質を電子的に実現する方法についてこれまでに研究開発が進められてきたが、流通性船荷証券のEDI化はいずれもまだ実用の段階にいたっていない。
アメリカ貿易手続簡易化委員会(NCITD)の法律問題作業部会は、船荷証券のような流通性書類を使用する取引慣習および船荷証券それ自体を廃止する可能性に関する調査・研究に着手したが、特定の取引では代金決済と権利移転のために、依然として船荷証券のもつ「流通性」が必要であるとの結論に達した。そこで、NCITDは、ECE/WP.4の1990年9月会期に、貿易取引において長年にわたり使用されており、また各国の法律で規定されている紙の流通性船荷証券に相当する電子式船荷証券のメッセージを開発するために必要なガイドラインと手続きについて提案を行った。