(5) ハンブルグ・ルール
ハンブルク・ルールは、運送証券と条約適用範囲との関係を断ち、すべての海上物品運送契約(有償契約)を適用対象としている。同ルール第1条(定義)において、「船荷証券とは、海上運送契約を証し、かつ運送人による物品の受取または船積を証する証券であって、その証券の提出と引き換えに物品を引渡すことを運送人が約束するものをいう」と定義している。また、第18条(船荷証券以外の書類)において、「運送人が船荷証券以外の書類であって、運送されるべき物品の受取を証明するものを発行するときは、このような書類は、運送契約の締結及びその書類上の記載物品を運送人が受け取ったことの一応の証拠となる」旨を規定している。したがって、海上運送状(SWB)は、ハンブルグ・ルールが規定する「船荷証券以外の書類」に該当するものと考えられるが、電子式船荷証券がこれに該当するか否かは不明である。
4. 船荷証券の危機と対策
(1) 船荷証券の危機
コンテナによるユニット・ロード・システムや高速コンテナ船の導入等、輸送技術進歩に伴い物品の迅速な輸送が実現したにもかかわらず、伝統的な流通性運送証券である船荷証券が使用されており、船積書類は為替手形と一緒に銀行等を経由して運送品の仕向地へ送付されるので、物品が仕向港に陸揚げされても、船荷証券が到着していないために、荷受人は運送人から貨物を受け戻すことができないという事態が発生している。このような事態を、船荷証券の危機とよんでいる。仕向地における船荷証券の延着は、運送品の引渡しを遅延させるだけでなく、保管料その他の追加費用を発生させるほか、港の混雑を増幅させているとの指摘もされている。
国連ECE/WP.4会議に提出された報告によると、一般に、船荷証券のコピー部数は10部から40部(時にはさらに多く)必要とされ、また、運送品別に作成されなければならないようである。これは船荷証券が、荷送人やフレイトフォワーダー、船会社およびその代理人、税関、領事館、港湾関係当局その他で使用されていることによるものである。これらは、船荷証券の用紙や印刷に係る直接費用に関連するものであるが、船荷証券の発行の準備や処理に係る経費も注目に値し、これが相当の費用に達しており、この削減が関係者の関心を集めているとの指摘もなされている。