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制定法上の"Document of Title to Goods"の定義に該当する証券であっても、これがコモン・ロー上の定義に該当しないものは、これを譲渡しても、譲受人に対する物品の推定的占有移転の効力は生じない。けれども、制定法上の"Document of Title to Goods"の定義に該当する証券は、これがコモン・ロー上の定義に該当すると否とにかかわらず、たとえ譲渡人が物品の所有者(owner)でなくても、問屋法または物品売買法により、"nemo dat quod non habet(自らもたざる物を与えることはできない)"(注-3)という一般原則の例外として、結果的に物品の権原(title to the goods)を譲受人に移転することになる。(例えば、1889年英国問屋法第2条、第8条、第9条および第10条。1979年英国物品売買法第25条、第47条。)

(注1) Lickbarrow v. Mason事件[(1787) 2 T.R. 63]。この事件の判決、1780年に覆された(reversed)[(1780) 1 H.Bl. 357]が、第2審において、Buller裁判官が貴族院(House of Lords)に"venire de novo"(新陪審召集令状)(注2)を要請した[(1784) 5 T.R. 683]。新陪審召集令状を発した貴族院により本事件の最初の判決が回復(restored)した[(1793) 2 H.Bl. 211]。venire de novo(新陪審召集令状):かつて刑事訴訟において、writ of error(誤審令状)に基づき、陪審のverdict(評決)に誤りや瑕疵があることを理由に、初めの陪審による評決を否定するとともに、事実陪審を再び行うべく新たに陪審員を招集するようsheriffに命じた令状。

下位裁判所(inferiorcourt)が第一審として下した刑事判決につき、王座裁判所(後に高等法院の王座部)がこの令状を発した。

(注2) 船荷証券を担保(pledge)として提供することは、物品を担保として提供した効果を生じる旨の判決がある。Official Assignee of Mercantile Bank of India Ltd. [1935]A.C. 53、 60。

(注3) "nemo dat quod non habet(自らもたざる物を与えることはできない)"という一般原則:権原(title)のない者から譲渡を受けても、その物についての権原を取得できず、真の所有者に対抗できないという原則を示す法格言。

船荷証券の譲渡人により、対価(valuable consideration)を支払った譲受人に対して、同証券に記載されている物品の所有権(ownership)を移転させる意思をもって船荷証券を譲渡するときは、船荷証券の譲渡により物品の所有権が譲受人に移転する。船荷証券の譲受人が対価を支払わなかった場合には、船荷証券に記載されている物品の所有権を取得することはできない。

 

 

 

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