船荷証券は、譲渡担保(mortgage)または(動産)質(pledge)として、譲受人に引き渡されることがある。船荷証券の譲渡が、譲受人に対する物品の所有権移転であるのか、譲渡担保または質としての提供であるかは、譲渡人の意思による。[Sewell v. Burdick(1884), 10 App.Cas. 74.]
ロ. 1992年海上物品運送法
英国のコモン・ローでは、船荷証券を裏書き・譲渡しても、運送契約当事者の地位が荷送人から荷受人に移転することはない。そのために、1855年英国船荷証券法(Bills of Lading Act 1855)により、流通性船荷証券の裏書・譲渡または交付により運送契約上の地位が荷送人から荷受人に移転する措置が講じられた。同法は"Carriage of Goods by Sea Act 1992"の制定により改正された。1992年海上物品運送法が適用される運送書類は、船荷証券(B/L)、海上運送状(SWB)及び荷渡指図書(D/O)である(同法第1条第1項)。
また、同法にいう船荷証券には、裏書によるか、または持参人式(to bearer)証券のように、裏書を要せず、単に交付(delivery)によるか、いずれかの方法で譲渡(transfer)できるものが含まれ、それ以外の書類を含まない(同法第1条第2項a号)。同法には、船荷証券の定義はない。コモン・ローでは、船荷証券の譲渡は物品の権原を移転させるに止まり、船荷証券に記載されている運送契約の譲渡(assignment)としての機能は認められない[Thompson v. Dominy(1845)、14 M.& W.403; Sanders v. Vnzeller(1843), 3 G.& D.580]。コモン・ローにおいて、荷送人の「指図人」("to order or assigns" of the shipper)」の文言、その他譲渡に関する当事者の意思の記載のない船荷証券は、これを譲渡しても、証券に記載されている物品の所有権その他の権利を譲受人に移転させることはできない[Henderson & Company v. Comptoir d'Escompte de Paris(1873), L.R. 5 P.C. 253]。
同法第1条第2項a号の規定を条件として、同法にいう船荷証券には、「受取」船荷証券を含む(第1条第2項b号)。また、国務大臣は、次の取引行為(transactions)を有効に行うために"telecommunication system"、その他の"information technology"が使用される場合に、本法がこれら適用しうるような規定を法令によって設ける