には、契約の条項、当事者の行為および四囲の状況を考慮しなければならない旨を規定している(SGA §17(2))。
けれども、売買契約の当事者である商人は、危険移転や費用負担に関心をもつことはあっても、所有権移転について殆ど注意を払わないが多いので、契約の条項、当事者の行為および四囲の状況を考慮しても、当事者の意思を確定できない場合が多い。そこで、このような場合に備えて、英国物品売買法には、5つの推定規則が規定されており、これに従って決定する(SGA §18 Rules 1〜5)。これには、特定物の場合と不特定物の場合があるが、貿易取引は、不特定物の売買契約であるから、次のルールが適用される。すなわち、「不特定物の売買契約の場合、契約に合致した種類の物品が引渡しうる状態(in a deliverable state)におかれ、かつ無条件にて契約に充当されたとき、当該物品の所有権は売主から買主に移転する」(SGA §18 Rule5(1))。例えば、FOB契約の場合、買主手配の本船に無条件で物品が船積みされると、そのとき所有権が買主に移転する。
(2) 所有権移転の効果
英国物品売買法では、物品の滅失・損傷の危険は、原則として、所有権に伴って移転するのであり、占有(possession)移転の有無とは関係がないと規定している(SGA §20)。また、物品が引渡しうる状態におかれるまで、売主は物品に係る一切の費用を負担しなければならない(SGA §29(6))。例えば、「1990年インコタームズ」は、売主・買主の義務をそれぞれ10項目に分けて規定している。インコタームズでは、具体的に所有権移転の問題には一切言及しないが、第4項で、売主の引渡提供と買主の引渡受理について規定している。他に別段の合意がなければ、売主の引渡提供が完了したときに、所有権が買主に移転したとみることができる。そこで、この規定に従って、第5項で、売主と買主がそれぞれ負担すべき危険について、また第6項では、各当事者が負担する最小限の費用について規定している。
売主の物品引渡と買主の代金支払は、原則として、同時履行条件であるく(SGA §27および§28; UCC §2-310および§2-507)。すなわち、売主は物品の占有移転の準備を行い、進んでこれを移転するとき、これと引換えに代金支払をうけることができ、