された船積書類が契約に一致するときは、これを受領して、物品が指定仕向港に到着するか否かに関係なく、代金を支払わなければならない。買主は、物品の船積後、海上運送中の物品の滅失・損傷の危険を負担しなければならない。売主は、船積書類の引渡によってのみ、代金請求を行うことができるのであり、現物の引渡による代金請求はできない。同様に、買主も、船積書類の提供を条件として代金支払いを行うのであり、物品の引渡を条件とする代金支払を要求することはできない。
このような基本的義務に従って、CIF契約では、実務上、売主は、買主宛てに手形を振出し、これを船積書類と一緒に買主に呈示して、船積み貨物の処分権を留保し、買主の代金支払を確保する。買主にとっても、船積書類によって、契約どおり約定品の船積が行われたことを確認し、また船荷証券によって運送品の引渡請求権、処分権を取得するので、安心して代金の支払いを行うことができる。換言すれば、安全な国際商取引は、CIF条件による引渡と荷為替手形決済を条件とする売買契約であるということができるのであり、その中心に流通性船荷証券が存在するのである。なお、これを一層確実なものとするために、荷為替信用状とトラストレシートを使用する慣習が第1次世界大戦後に発達した。米国統一売買法の起草者として知られるハーバード大学法学部教授のウィリストン博士は、一組の船積書類を使用する物品売買契約を商人が発明した最高の傑作であると高く評価している。
このような貿易契約が、電子商取引でも可能なのか。この場合、船荷証券だけでなく、保険証券、インボイスその他の船積書類のEDI化、ならびに為替手形のEDI化をすれば可能になるのか。電子メッセージを使用する場合でも、現行の紙の書類の場合と同じ手順で荷為替の取組を行うのか。あるいは、電子メッセージは、紙の書類のような物理的な存在がないので、従来と全く異なる手順で、紙の書類と同等の機能を果たすことができるのであろうか。環境が全く変わってきたけれども、電子式船荷証券という名称は別にして、このような電子メッセージを必要とするのか。あるいは、海上運送状のような性質の電子メッセージで十分なのか。さまざまな意見がある。本章では、まず国際物品売買契約における流通性船荷証券の役割について考察し、次いで、そのEDI化への取組みの現状と問題点を述べる。