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2. 法的側面からの考察

 

(1) 物品売買契約における船荷証券の役割

─流通性書類のEDI化への取組みの現状─

1. CIF契約と船荷証券

国際商業会議所の「1990年インコタームズ」には、工場渡条件から持込渡(関税込み)条件まで13種類の定型取引条件(Trade Terms)が規定されているが、わが国の輸出入貿易取引で使用されている定型取引条件に関する実態調査報告書によると、わが国では、圧倒的に、FOB条件とCIF条件が使用されており、新しい輸送形態に用いる定型取引条件(FOA条件、FCA条件、CPT条件、CIP条件等)は殆ど使用されていない。その理由として、「1990インコタームズ」が十分に普及されていないことが挙げられているが、それだけが原因ではない。FOB慣習とCIF慣習は、150〜200年の伝統をもち、この間に各国の判例の積み重ねによって国際商慣習法としての確固たる基盤ができあがっているのである。したがって、貿易契約の当事者は、「1990年インコタームズ」に拠らなくても、安心してCIF条件による物品売買契約を締結することができる。

CIF条件による物品売買契約(CIF契約)は、今日の典型的な貿易契約である。隔地取引形態の物品売買契約では、売買当事者は、通信手段を用いて契約を締結し、運送・保険・金融の3つの主要機関を使用して、物品引渡と代金支払を履行するのであるが、CIF契約は、これらの機関のもつ機能を利用するために作られた取引慣習で、19世紀中葉に生成・発達したものである。

CIF契約の売主の主要義務は、指定仕向港まで物品を運送するために運送契約を締結し、約定期間内に物品を船積みして運賃を支払い、船荷証券を取得し、海上保険の手配を行い、保険料を支払って保険証券を取得し、船積書類(船荷証券、保険証券、インボイスその他)を買主に提供することである。一方、買主は、売主から提供

 

 

 

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