『電子B/Lの物権的効力を否定する主張が出てくる可能性があり、貨物の所有権の譲受け人・質権者は対抗要件を備えぬ不安定な状態に置かれる虞があるのではないでしょうか?』
『運送品の処分とは運送品の返還・運送の中止・仕向け地の変更等の運送人に対する債権的処分のみならず、運送品の所有権の移転・質権の設定などの物権的処分も含まれています。従って電子B/Lは船荷証券では無く、たとえ電子B/Lを保有していても、それ以外の方法で運送品の処分をすることが許されるとの主張が為されると電子B/Lの譲受け人の立場は極めて危ういものになります。』
『日本の国際海上物品運送法9条運送人は船荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の船荷証券所持人に対抗することが出来ない。とされていますが、これも流通性を保護し、人的抗弁を制限する有価証券の機能ですが、電子B/Lが船荷証券では無い、と言うことになると、運送人は電子B/L記載の事実に拘束されず、例えば、受け取り前の貨物の実際の数量・状態を別途証明する等により、電子B/Lの記載が事実と異なることをもって電子B/L所持人に対抗できる事になります。』
いずれも、電子化システム利用のルールブック署名者以外の者が権利・義務に係わった場合に起こる問題である。事故・破産・犯罪などにより、通常想定したルールブック署名者以外の取引き当事者が係わって来る事は多いに有り得る事であろう。これらへのシステム的な対処としては、電子化システムのドメインを明確にし、それ以外の法的・制度的仕組みとのインターフェイスを一つ一つ、それら制度との関係で定義しておかなければならない。また、電子化システム側で独自にインターフェイスを定義したとしても、それに係わっている法的・制度的仕組みが、その定義と対応を拒否する懸念も存在する。そのような意味では、電子化貿易手続を導入・利用するに当たり、電子化することにより得られるメリットと、考えられるリスクを受容するコストとの比較において、考えなければならない課題である。
(6) ヘーグ・ルールやヘーグ・ヴィスビー・ルールが適用されない虞
『日本の国際海上物品運送法は例外的存在であり、船荷証券が発行れているか否かに拘わらず、総ての外航運送契約に適用されますが、ヘーグ・ルールやヘーグ・ヴィスビー・