つ、更には当事者のリスクを受容しつつ運用されているものと思われる。このように複雑な制度ドメインの輻輳のままで、その仕組みをトラスティックに変革(例えば、B/Lの電子化)するのは、関係当事者に大きなリスクを伴う事となろう。
これら現状の複雑な仕組みの中に、貿易手続きの電子化を持ち込む場合、関係する全ての制度ドメインとのインターフェイスを定義し、それを国際的な制度として導入できると考えるには無理がある。よって、当エリアの電子化においては、それ自身のドメインを明確に定義し、その仕組みが当該ドメインの中でしか有効でない事を、当事者が認識しておく必要がある。また、当該ドメインでのみ有効なルールブックを制定し、ルールブック署名者間でのみの電子化を設計するしかないであろう。
(3) 非メンバーとの関係
『EDIシステムの中でメンバー以外の者が電子B/Lの譲受け人になった場合に強制的に紙の世界に戻すのであろうか?要請があった場合のみ紙のB/Lを発行するのか?メンバー以外への譲渡を禁止しない限り、メンバー以外の者が荷受け人乃至B/L譲受け人となる可能性は高いであろうし、その場合には有価証券が発行されていない事による問題が生じてくる。
もし紙の世界に戻すとして、どの様な方法を用いるのであろうか?船社が改めて文書で発行することになるのであろうが、何処の店処で発行するのであろうか?船荷証券は必ずしも積み地で発行する訳では無く、通常は荷送り人の都合の良い場所で発行される訳であるが、この譲受け人のいる近くに運送人の店処があり、オンラインでB/L情報が取り出せるとは限らないであろう。署名者の問題と裏書きの連続の問題がある。
メンバーとなった船社は私的契約に拘束され、電子B/Lを有価証券として扱う事になるが、非メンバーが有価証券性を否定してきた場合、損害を被る可能性がある。この場合の補償のルール化も必要であろう。』
一度電子化されたB/Lを、なんらかの事情で紙のB/Lに戻すケースは、ルールブックに規定された電子化ドメインと外の世界とのインターフェイス設定問題である。このインターフェイスは、技術的検討以前に、法的・制度的なルールの設定が必要であり、技術的な対応方法はそれに基き設計されるであろう。いずれにせよ、現実の貿易取引き電子化において、紙のB/Lとの運用上の関係を無視する事はできず、この課題を解決しておく事は電子化システム導入の前提条件である。