日本財団 図書館


コンテナ船による輸送ではコンソ─シアム方式による他船社船輸送(それが傭船である場合も多々ある)が多く、在来船、不定期船では傭船による輸送が多い。実際に誰が運送人か、と言う問題は単に使用しているB/Lフォームだけでは無く、諸点を考慮して決定されるのであろうが、何れにせよ、こうした当該契約船社以外の船主、傭船者までを私的契約で拘束するのは難しい。』

この問題は、過去に形成されてきた制度・慣習が、現状の運送システムの多様性に追いつかないまま、当事者同士の契約関係が拡散してきたために派生したものと思われる。これを技術的な観点で観るなら、自己保有船以外による運送形態を含めた、運送システム全体のビジネス・プロセスの明確な定義が必要であると言える。現状の仕組みを電子化するに当たって、常にその課題となるのは、現状とそれが目的とするところに矛盾や不合理性が存在している事である。現在のビジネス・プロセスの分析および定義のための技術手法(IDEF、UMLなど)では、現状のプロセスとプロセスに付随する情報を明確に定義し、かつ、その目的とするところから、プロセスの改善と簡易化を提案する事ができる。

最新のビジネス・プロセス分析手法によりそれを明確にした上で、それぞれの当事者間の契約関係を遂行するための、それぞれの情報交換を技術的に安全が保証された方式(例えば、本人確認/否認防止)で電子化すれば、仕組み全体の安全性は確保できるであろう。

(2) 荷送り人、荷受け人乃至B/L譲受人・所持人の多様性

『現在提案されている貿易金融EDIでは、ルールブックに署名した会員による電子取引を想定している。こうした電子B/Lクラブに荷送り人がメンバーとなるのは必須の事であるから問題は無いとして、荷受け人乃至B/L譲受け人がメンバーである確率はどの程度のものになるのであろうか?荷主は始めから誰がB/L譲受け人となるのか判断して、関係者がメンバーの時にのみEDIシステムに載せてくるのであろうか?全ての関係者に非メンバーへの譲渡を禁止するのであろうか?もし、非メンバーに譲渡し、その結果、関係者が損害を被る者が出た場合補償はどうするのであろうか?』

あらゆる取引きの仕組みは、それが紙の文書で権利・義務関係を伝達しようが電子的に行おうがにかかわらず、取引き関係者が所属し、それを認め合った制度ドメインの中に存在している。その制度ドメインにおけるルールは、私的契約関係・国内法・国際私法や業界慣習、あるいは交換協定やルールブックにより規定されているはずである。貿易に係わる取引きの場合、往々にしてそれら制度ドメインが重なり合い、幾ばくかの矛盾を抱えつ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION