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た業務知識、能力を十分に活かしきれず、結果として電子化のメリットをまったく享受できないばかりか、かえって業務に混乱を来すという事態も想定される。

貿易金融EDIについては、現状の「書面」で行われている取引をそのまますべて電子に置きかえるというアプローチでは早期実現は困難と思料される。貿易金融EDI化のメリットを最大限に生かすためには、関連貿易事務の取扱いそのものをEDI環境に適合するよう変更してゆくという関係者全員の合意と創意工夫もまた不可欠な要素であると思料される。

 

6. クロスボーダーシステムとしての枠組みの展望:

クロスボーダーシステムとして必要と思われる事項は概略以下のとおり。

(1) 要件定義:

クロスボーダー・システムとしてのグランドデザイン

基幹的なシステムとしてのスコープとその要件の定義

ユーザ機能の範囲と要件定義

(2) 統一規約:統一規約による現行の法的・契約枠組と電子取引対応

(3) 運営主体:システム運営主体の信認(第三者/当局による査察など監督・牽制体制)

(4) 認証機関:認証の在り方(運用主体と適格性、準拠法制、監督体制)

(5) 安全技術:電子署名と公開鍵方式(暗号方式と新技術基盤への移行対応性の確保)

(6) 行政関係:行政手続(各種届出、報告、申請、手形保険、収入印紙税)

(7) 法制関係:法制手続(適合性)

(8) 災害対策:災害時の対応(広域、単独)

(9) 損害対応:損害等の補填(保険の適用)

(10) 紛争対応:仲裁・調停─電子取引への対応

(11) 料金関係:料金水準、課金方法、支払通貨・方法、源泉課税問題

 

7. 貿易金融EDI化にあたり検討を要する事項

貿易金融EDIの環境下では、従来の「紙」をベースとした取扱いに比べ大きな相違が予想される。前段に述べたように電子化取引の環境下を想定し、システムはもとより、そのシステムが稼動する各種環境整備、要員教育など各種検討と準備が必要である。以下電子化環境への移行のために検討を要すると思われる事項をいくつか列挙する。内容的には複数項目にまたがる事項や別の分類項目に編入したほうが妥当と思われる事項もあるが、一応の区分とした。

(1) 法律・契約側面

a. 取引約定:電子取引対応/取引約定書の見直し検討。

b. 電子署名:電子署名(ディジタル署名)の法的有効性

c. 契約関係:関係当事者、サービス提供者相互間の各種契約関係

(運用主体、認証局、登録機関、参加者の義務と責任の範囲の明確化)

d. 運営主体:システム運営主体の法的存在、第三者/当局による監督

e. 危険負担:船積書類に関わる権原移転の具体的方法と当事者の危険負担

 

 

 

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