C. 「為替手形」の問題
為替手形については、基本的には英米法に準拠するものの、各国の取扱いについては種々相違が見られると言われている。また手形にかかわる法効果のすべてを電子的に模写(レプリケーション:replication)するには、慎重かつ詳細な検討を必要とするものと思料される。当面の現実的な対応としては、「為替手形」を使用しない方法における課題について具体的な検討を進めることが先決と考えられる。
(6) 電子書類に関わるリスク
L/C付取引の場合、関係書類の条件チェックが物理的に困難となる状況も想定される。即ち「紙」の書類であれば、一件書類が全通そろった形で呈示されるため、関係書類を一度に検閲できる状態にある。
電子化書類の場合、電子書類の抽出、チェック、保管、伝送、認証、電文到達確認など、全ての作業が電話回線ネットワークや通信システムならびにコンピュータシステム/ソフトウエア/画面ディスプレイ/キーボードなどに依存して行われる。このためOSの違いやファイルの変換相違、変換不能、文字変換障害、記録保存媒体のスペースドラブル、回線障害、誤操作による受信データの喪失など、電子データに固有の各種障害・リスクも懸念される。また担当者のコンピュータ操作の習熟度により作業効率自体も左右される。
(7) 電子書類の点検作業の自動化
一般に、メールのソフトで関係書類が送付されるケースを想定した場合を考えてみると、以下のように、電子書類のチェック作業は困難を伴うものと推察される。
a. 個々の書類をクリックして、画面上に展開する。
b. 次に個別の書類とL/C条件との整合性を、担当者がキイボードを操作し肉眼で確認する。
c. 役職者は後刻、担当者のチェックしたデータについて確認(検印)を行う。
d. 役職者確認(検印)の後、役職者が名宛人に対して発電の処理の指示を出す。
添付書類のひとつひとつをクリックすることにより、各書類はWindowsのなかで展開されるが、画面ディスプレイ上にひとつひとつ表示しながら、関係項目を人間の眼で検証してゆくことが想定される。担当者の目の残像に依存するチェック作業そのものに対する不安感また役職者の検印時点において担当者の確認の事実を具体的に証明する方法など問題は少なくないと言える。銀行のようなリスク仲介業としては、安全な取引の実現が最大の関心事のひとつである。書類上の条件チェックのみで書類を買取る銀行としては、関係書類の厳密なチェックが要求されている。銀行としてはこの照合作業の自動化なくしては、関係作業の効率化・時間短縮の実現は困難であると考えている。
いずれにしても電子化に対応する十分な受入れ準備体制を講じないと、それまで培ってき