せねばならず、後刻「紙」の書類が追加提示された時点で、予め保管していた関連電子書類(ファイル)を抽出し、同一取引の書類であることの確認マッチングを行った上で処理が行われる。
また、これらの作業は、各地に点在する支店と地域別の本部センターを連携して行われることから、事務の一層の煩雑化を誘発し、作業効率、コスト、保管、マッチングなど迅速かつ安全な事務処理に支障をきたすことが懸念される。
a. 「信用状」(L/C:Letter of Credit)
本件の事例としては、たとえば信用状(以下L/C)の問題が存在する。
現状L/Cは、大半がスイフトを経由して銀行間で電子的に受け渡しが行われている。ところが(通知)銀行が当該L/Cを輸出業者へ引き渡す場合は、スイフト経由受信した電子メッセージを紙の上に印字したうえでカバーレターに添付して顧客に手交している。後日、顧客(輸出業者)はこの紙のL/Cとともに買取(取立)依頼書に関係貿易書類一式を添えて銀行に持ち込む。(買取)銀行は、提出された書類の内容をチェックのうえ、海外にあるL/C開設銀行宛てに国際書留郵便ないしは民間のクーリエ・サービスなどを利用して送付している。買取依頼時に提出された「紙」のL/Cについては、買取銀行が当該L/C裏面に使用残高を記録のうえ受益者である輸出業者に返却する。
この一連の処理において、L/Cが紙のままで残ると電子化のメリットは大幅に減殺される。
すなわち電子書類データは、顧客(銀行)から直接ネットワークから受信できるにも拘わらず書類の内容確認に必要な「紙」の信用状(L/C)は、現状同様、営業店経由各地の拠点センターへ行内メールにより運搬される。このため、書類の搬送の時間を大幅に短縮することが期待されている貿易金融EDI化のメリットは大きく後退することとなる。
b. 「原産地証明」
もうひとつの事例としては、「原産地証明」の取扱いがある。
L/Cの場合は輸出地サイドの国内における取扱いであるが、「原産地証明」のように船積書類の一部として海外の輸入業者に送付されるもので、電子化対応ができない場合は、電子メッセージ送信に関わる作業コストに加え、当該書面の郵送コストが追加されることになり、作業の手間が減らないばかりか、EDI化のメリットの大半が消滅することとなる。本件に関しては、わが国の場合発行もとである日本商工会議所の電子化対応が望まれるが、受入れ側国の関係行政手続きにおいても、当該書類の電子化を許容することが大前提となる。
これに類似した事例としては「領事査証」なども同様である。
本件電子化に対する投資コストなどを考えると、たとえば会員制として、年会費と使用料ベースとして、会員だけがアクセスできるhome pageを開局し、web siteからフォームをダウンロードして、必要項目を打込むことで必要書式が発行されるようなイメージが最も経済的にも適合性が高いように考えられる。また、当該事務を専門に代行する第三者機関によるサービスがあっても良いのではないかとも考える。