(11) 関係書類の電子化による顧客窓口との一体化の促進と当該事務本部集中処理の進展
(12) 海外拠点との連結による内外拠点を結ぶ一大ネットワーク網を活用したサービスを提供することが可能となり、競争力強化を図ることが期待される。
5. 貿易金融EDIのデメリットないし不安材料
(1) 「安全性の保証」
安全とは技術面のみならず法制面、行政面、事務面、運用面など全ての局面における安全性の保証が前提となる。即ち、偽造・変造リスクの回避、電文の確実な配信、低廉かつ確実な保管管理、高度自動照合、瑕疵のない取引の実現などすべての期待効果は、システムそのものの安全性に優るものではない。
(2) 「貿易関係書類の点検作業の自動化」
貿易関係書類相互間の個別情報内容の照合作業が自動化されないことには、銀行における書類照合作業の省力化メリットはあまり期待できないものと思料される。各銀行におけるコンピュータ・システムの適合度合いにもよるが、貿易関係書類はフォーマットが統一されておらず、また項目によってはコード化されておらず、また平文による条件記述なども多い現状である。このため自動化による厳密な照合は制約が多いものと思料され、最終的には人間の眼によるチェックに依存する部分が多く残ることが懸念される。
(3) 「関連周辺業務による収益基盤の確立」
貿易金融EDIによる作業効率向上の理念が先行することにより、実際は作業・投資の負荷が増大するにも拘わらず、実効の裏付けのない関係手数料、金利などの改訂を迫られる局面も懸念される。特に、外国からの銀行の攻勢も加わり一層厳しい環境に置かれる可能性が大きいと言えよう。
(4) 「「紙」と「電子書類」の併存による効率の低下」
「紙」の書類と「電子」の書類の両方が併存することとなると、事務処理・フローが二元化し、現場における作業効率の低下、混乱、誤処理の誘因ともなりかねず、ひいては作業コスト、事務リスクの上昇に繋がるおそれがある。システム導入当初から相当期間、プロダクトラインの二元化は避けて通れないことが予想される。この二元化の下における処理コスト圧縮ならびに二元化の期間を出来るだけ短縮することが課題となるが、その実現は容易ではないものと思料される。
(5) 電子取引に関わる関連書類の一部が「紙」の書類に留まる場合:
所要書類の一部につき電子化処理ができないような場合(相手国や自国の法的環境行政上の要請など)一部でも「紙」が残るため電子化に期待される書類搬送のメリットの大半は消滅する。
この場合「紙」の書類が提出されるまで、関連電子書類(ファイル)を安全に保管