いずれにしても、保険証券の裏面約款と特別約款の取扱は、損害保険業界に取って深刻な問題であることには間違いなく、船荷証券の裏面約款と共通した問題である。
1] 裏面約款と特別約款を電子データ化して、そのままデータ伝送する。
2] 各損害保険会社は、裏面約款と特別約款をコード体系化して、例えば公正中立機関の(社)日本損害保険協会に届け出て、同協会のデータ・ベースで登録/管理する。各損害保険会社は、電子保険証券に約款コード番号を付記してデータ伝送する。被保険者は、必要に応じて(社)日本損害保険協会のデータ・ベースにアクセスし、それぞれの約款内容を把握する。
(2) 海外クレーム対応
輸入貨物契約の場合、損害保険会社に事故通知がはいり、損害保険会社で契約内容も把握できるのでクレーム処理には支障を来さない。しかし、輸出貨物の場合、事故通知が海外顧客(被保険者)より保険証券に記載された海外損害査定代理店(世界の主要都市に所在)にはいり、損害査定代理店は海外顧客より提示された保険証券から契約内容を把握した上で填補責任の可否を判断している。従って、海外損害査定代理店が電子保険証券を確認できる方策を考慮しなければならない。海外顧客が、電子保険証券をプリントアウトした後で紙ベースの保険証券を損害査定代理店に提示するのであれば、データ改竄の防止策が必要となる。将来的にも。発展途上国の損害査定代理店は、電子保険証券を扱い得ない可能性も考えられる。国内と同様に海外クレーム処理も保険金の適正・迅速払が、基本的な顧客サービスであることを忘れてはならない。
(3) 紙ベースと電子データ・ベースの併存
紙と電子の併存は、発券現場を混乱に陥れ、これまで以上に負荷がかかる。併存も、輸入貨物と輸出貨物の大区分で行われるのであれば、システム補完で発券現場の業務運営は切り抜けられるが、「この契約は電子だ、あの契約は紙だ」と顧客指示にフォーローするやり方は避けたい。一時的には、紙と電子データの併存期間は起こり得ると考えられるが、併存期間は出来るだけ短縮すべきである。