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入力費用も当然だが、コンピューターそのものの設置費用の削減も進められているので、入力費用の不要な、データの形で船社にS/A、D/Rが送られてくるとしても、それを受けるコンピューター・マシンを日本に置いておく必然性は無くなるので、前工程のEDI化の進展も船荷証券の国外での作成問題を解決しない。

貿易金融決済システムのコンピューターの設置場所に注目して、在日本の貿易金融決済システムに電送する船荷証券全件を対象とするのも無理がある。一国一決済システム時代にならない限り、日本に設置したコンピューターで複数国の決済を対象とする場合もあり、紙ならば外国発行になるものが日本のシステムに電送される可能性がある為である。

更に言えば荷送人としても決済を迅速化させる為だけならば仲介者は少ない程、時間と費用の節約になるのだから、こうした貿易金融決済システムが唯一で且つ全世界を一台のコンピューターで管理するのならば別の話だが、多数の分散型システムになるのであれば例えば欧州向け輸出の場合には、無理して日本の銀行に持ち込まなくとも例えば直接欧州のL/C発行銀行との決済にする、つまり欧州の貿易金融システムに直接日本の船社システムから電送させても構わない筈である。

この場合例え日本に設置してある船社のコンピューターから署名付きで電送されたにしても発行地(作成地)は欧州と考えるべきであろう。又相殺(ネッティング)方式を採用する荷送人は当然別の国の貿易金融決済システムを選択する可能性がある。

6.4. 課税対象文書枚数

基本通達では船荷証券が数通発行されていても、Original又はFirst Originalのみを課税対象文書とし、non-negotiableは課税文書に該当しない、とする。

データでしか無い、電子船荷証券に於いて通数をどう考えるのか、又、そのデータから紙の世界に戻した時、やはりoriginal又はFirst Originalと言う文言が無ければ各通が課税対象になるのか、その場合に既に電子船荷証券として課税済み乃至非課税の時、別に課税対象となるのか等々、検討課題は多い。

 

7. 結語

船荷証券の電子化は貿易金融の為だけでなく、貿易関係書類作成費用削減のためにも必要である。本報告書で多くのリスクを指摘したのは、電子化は危険だから止めなさい、と言う趣旨では無く、電子化は必要です、しかし同時に危険も承知しておきなさい、と言う趣旨である事を理解願いたい。

又、問題点として数多くの項目を指摘した背景には、電子化議論が決済の迅速化のキーとなる船荷証券に集中し過ぎており、もう一つの目的である貿易関係書類作成費用の削減に結びつく、その他の書類、作業の電子化に及ばない事に対して、関係業界への注意喚起を意図したためである。

(以上 早坂委員)

 

 

 

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