6.3.2. 課税基準設定の困難さ
仮に電子船荷証券が日本の印紙税法の対象となる、としても何処でどの様に作られ、何処のコンピューターに送られ、何処にすむ荷送人に発行されたものが、課税の対象になるかは、実務的に難しい問題と思われる。
印紙税法では"作成地"が基準となる(第3条納税義務者。基本通達での作成等の意義は交付する目的で作成される、印紙の貼付は交付の時、と言う内容になっている)ようであるが船社の実務では、これは船荷証券面上の「発行地」と、ほぼ同等の意味を持つ。
通常の意味での作成地とは例えばD/Rを使用して船荷証券用紙に印刷した場合に作成した事になるのであろうが、印刷地と発行地が同一とは限らないし、その場合には船荷証券への署名を発行地に於いて発行直前に行うので、その時点を以て作成として印紙をスタンプして、発行地所轄税務署に納税している。この発行地名は船荷証券面上に記載される。
従ってこうした手順からすれば在日本の貿易金融決済システムのコンピューター内で発行される電子船荷証券が日本国内での作成文書として課税対象となると思われるが、電子船荷証券に発行地と言うデータ項目が必須とも思えず、そもそも何を以て「作成=発行」と見なすのかが問題となる。
基本通達では作成が国内ならば、その使用保存が国外でも課税対象となるとされている。逆に作成場所が国外ならば使用行使が国内でも適用外と言う趣旨もあり、作成地が基準となっているが、その作成の意義が電子船荷証券では曖昧になってくる。
もし船社が貿易金融システムに電送した時を以て「作成・発行」があったとすれば、これは各貿易金融システムや各船社のネットワーク構成と密接に関係して来るが、課税対象になるのは、同本に置いて在るコンピューターで電子船荷証券情報を作成し、貿易金融システムに電送したもののみが課税対象となり、日本に船荷証券情報作成用コンピュターを置いてない船社の電子船荷証券は課税対象外と言う事になる。
船荷証券情報の入力に掛かるコストの削減は各船社共に既に着手済みであり、その方法の一つとして日本で発行する船荷証券の情報入力を人件費の安い国で試みている船社があり、その場合、入力国設置コンピューターから直接日本の貿易金融決済システムに電送する方法もあり得ることは当然の事である。