5. その他の問題
5.1. 流通過程における文書船荷証券への切り替えの場合の裏書きの連続性の問題
貿易取引の途中まで私的契約当事者間で電子船荷証券で取引し、途中から文書の船荷証券に切り替えた場合、紙の船荷証券上には裏書きの連続が存在しない事になる。文書化までの電子的裏書きの経過を何らかの証明書を船荷証券に添付する等の方法では、少なくとも譲受人に対し、裏書きの連続性が有る、と言うのは困難であろうし、法的な効力も疑問がある。
5.2. 売買契約上のトラブルの表示
船荷証券と引き換えに貨物を渡した場合に、運送人が免責されるためには悪意・重過失が無いことが前提となる。
船荷証券を巡っては荷送人、荷受人の他に途中の譲受人など多くの関係者が存在し、又これら関係者間には売買契約上のトラブルとして二重売買、代金未払い等契約不履行更には船荷証券の窃盗による所持人や倒産による利害関係者が存在する場合がある事は既にふれたが、こうした情報はどこまで決済システムの中でデータとして表示されるのか。表示された場合に運送人に要求される注意義務は加重されるのか。表示されない場合と雖も決済に遅延があった場合等は運送人は商取引上何らかのトラブルが生じているとの推測をし、注意義務が加重されるのであれば船社の責任・手間は増す事になる。
5.3. 誤データ等への対応
例えば、データ上、電子船荷証券が荷送人の所に留まっていたり、銀行が保有している事になっているにも拘わらず、紙の船荷証券(無論本物の船荷証券)を所持した人が現れて貨物の引き渡しを要求した場合等、何かの間違いでトラブルが生じた時に、それの究明に手間取り、真正の荷受人を見つけだすのに時間が掛かり、損害賠償とまでは言わないまでも倉庫料等の費用が発生した場合、誰がそれを負担すべきかは、事前にルールで明確化されるべき事項である。