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とされているが、この物権的効力を否定する主張が出てくる可能性があり、貨物の所有権の譲受人・質権者は対抗要件を備えぬ不安定な状態に置かれる虞がある。

4.9. 処分証券性が否定される虞

商法573条貨物引換証を作りたる時は運送品に関する処分は貨物引換証を以ってするに非らざれば、之を為すことを得ず。

ここで言う運送品の処分とは運送品の返還・運送の中止・仕向け地の変更等の運送人に対する債権的処分のみならず、運送品の所有権の移転・質権の設定などの物権的処分も含まれている。従って電子船荷証券は船荷証券では無く、たとえ電子船荷証券を保有していても、それ以外の方法で運送品の処分をすることが許されるとの主張が為されると電子船荷証券の譲受人の立場は極めて危ういものになる。

4.10. 文言証券性を否定される虞

日本の国際海上物品運送法9条運送人は船荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の船荷証券所持人に対抗することが出来ない、とされているが、これも流通性を保護し、人的抗弁を制限する有価証券の機能である。

電子船荷証券が船荷証券では無い、と言うことになると、運送人は電子船荷証券記載の事実に拘束されず、例えば、受け取り前の貨物の実際の数量・状態を別途証明する等により、電子船荷証券の記載が事実と異なることをもって電子船荷証券所持人に対抗できる事になる。

現在の実務では鋼材等でrusty等のリマークが付いた場合に荷送人のL/Gと引き換えにCleanの船荷証券を発行しているが、荷受人からの賠償請求は拒否出来ない。しかし、電子船荷証券の場合にはMate's Receipt等を利用して荷受人からの求償に対抗しうることになる。これでは譲受人の地位が不安定になってしまう。

 

 

 

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