もし、電子船荷証券が有価証券では無いとすると、商法519条(有価証券の善意取得及び譲渡方法)が適用されず、民法の債権譲渡中でも指名債権の譲渡の規定の適用が主張されると思われる。その場合は譲渡に債務者への通知や債務者の承諾を要することともなり、対抗要件としての確定日付のある証書が必要になったり(民法467条)や人的抗弁が可能になる(民法468条)事も考えられる。
4.6. ヘーグ・ルールやヘーグ・ヴィスヴィー・ルールが適用されない虞
日本の国際海上物品運送法はその適用事例が例外的存在であり、船荷証券が発行されているか否かに拘わらず、総ての外航運送契約に適用されるが、ヘーグ・ルールやヘーグ・ヴィスヴィー・ルールは本来、船荷証券が発行されている場合にのみ適用されるルールであり、日本以外の法律が適用される場合には、こうしたルールが適用されなくなり、契約自由の原則に従って電予船荷証券の約款が文言通り効果を持ったり、逆に米国ハーター法等各国の一般の運送法が適用される事態が考えられる。
4.7. 受け戻し証券性
商法584条貨物引換証を作りたる場合においては之と引換に非ざれば、運送品の引き渡しを請求することを得ず。
例えば荷送人が倒産した場合に、電子船荷証券を入手した利害関係者は、受け戻し証券性を主張して貨物の引き渡しを要求し、他の者は電子船荷証券は船荷証券では無い、として貨物上の物権等に基づいて引き渡しを要求してきた場合、船社から見れば対応に困る事態となる。
この点は平成3年度報告書の中で銀行業界の立場からもドキュメント性と受け戻し証券性をL/C取引の車の両輪と解説されており(54頁)、単に当事者間の私的契約のみで解決出来ない、重要な問題では無いかと思われる。
4.8. 物権的効力が否定される虞
商法575条貨物引換証により運送品を受け取ることを得べき者に貨物引換証を引き渡したるときはその引き渡しは運送品の上に行使する権利の取得につき運送品の引き渡しと同一の効力を有す。