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4.2. 貨物引渡請求権者の特定

4.2.1. 現行実務

例えば日本商法第771条(数通の船荷証券発行と陸揚港での運送品引き渡し)や第774条(一通の船荷証券所持人への引き渡しと他の船荷証券の失効)に見られる様に従来、運送人は船荷証券の裏書きの連続を確認して、船荷証券所持人に貨物を引き渡す。

実務としてはD/Oを船荷証券所持人に発行すれば有価証券の免責的効力により、悪意・重過失が無い限り、例え真の権利者で無い者に貨物を引き渡しても免責される。その船荷証券が文書の形で発行され無い場合に、現行法制下では誰に引き渡せば船杜は免責されるのか、と言う重大な問題を抱える事になる。

4.2.2. 私的契約での実務の問題点

私的契約の枠内では貿易金融決済システムから最終権利者(貨物引き渡し請求権者)のみがD/Oを打ち出せるようにする等、EDI決済システムの枠内でD/O発行作業まで電子的に処理されないまま、最終権利者の特定のみが電子的になされた場合、システムで裏書きの連続は表示されるにせよ、運送人はD/Oを取りに来た相手が電子的には真正な荷受人と確認されている者と同一人であるかを確認するリスクを負う事になる。

貿易金融決済システム内で、電子船荷証券の移転が記録されて行く仕組みが取られるのであろうが、電子船荷証券の最新の所有者である事だけでは、貨物引き渡し請求権者とは為り得ない。船荷証券がそれ以上移転しない事の確認が出来る仕組みが必要である。その場合にのみD/O乃至真正の電子船荷証券所持人である事の証明書が打ち出せるようにする等の処置が必要である。

言い換えれば貿易金融決済システムの枠内でD/O発行作業まで電子的に処理され、それの持参人に貨物を引き渡せば船社は免責される仕組みにしない場合には、船社がEDI決済システムを参照する事により電子的にはA社が真正な荷受人であることが分かっても、現実にD/Oを受け取りに来ている人がA社の人である事の確認をどの様にして為すかは容易では無い。

 

 

 

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