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それらは主として船荷証券が紙の形で作成され、法律により有価証券性を付与されているために船社には実体的権利関係とは関係無く、船荷証券と引き換えに貨物を引き渡せば免責的効力が認めらるが、電子化する事により"船荷証券が発行されていない"と主張される危険性であり、船社業界に影響を与えるものが大半ではあるが、荷送人・荷受人等にも影響を与えるものもある。

これらは、学者等により指摘されているものと実際に生じたものを列挙したもので、確率的には低いものの、決して机上の理論的リスクでは無い。こうした危険を理由に電子化に消極的になる必要は無いが、逆に電子化は今以上の危険を伴わない、と考えるのも間違いである。要は、危険性を認識して対応することである。

又、電子船荷証券が法制化されても、内容が一律で無ければ、適用法規の差による危険性を含んでいることは、現在の状況と変わりは無い。寧ろデータのクロスボーダ性から、関係国が増え、より複雑になる可能性があるものと言わねばならない。

例えば船荷証券が有価証券として効力を持つかはその準拠法による事になるが、電子船荷証券法が未制定のA国に本社のある船杜が既に電子船荷証券法が制定されているB国で貨物の積み取りを行い、その船荷証券情報はB国の通関業者からA国にある当該船社のコンピューターに電送され、加工された上で電子船荷証券として電子船荷証券法の制定されているC国にある決済システムに電送され、C国在住の荷送人に発行されたとする。この場合の電子船荷証券がどの様な法的立場・内容を与えられているかに付いて準拠している法律はA、B、C何処の国のものなのか不確定である。

通常、船荷証券の裏面約款には運送契約の準拠法(注13)が規定してあり、それは当該船杜の本国法である。電子船荷証券の場合に裏面約款がアプリオリに適用されるのか等、疑問は多い。

(注13) 準処法:通常船荷証券の裏面約款には例えば、Governing Law and Jurisdiction として「The contract evidenced by or contained in this Bill of Lading shall be governed by Japanese law....」などと規定されている。

 

 

 

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