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(3) 船荷証券電子化のデメリット

 

世界的に電子船荷証券が法制化されるまでは私的契約により電子化された船荷証券情報を流通有価証券と「擬制」して船荷証券関係者を拘束するクラブ制を採らざるを得ないが、船荷証券を巡る関係者の多様性による「私的契約外関係者」の存在が私的契約関係に危害を与える可能性がある。

 

1. 私的契約で電子船荷証券を擬制する事の限界

輸送関係者・貨物関係者は余りに多様であり、彼らすべてを契約当事者とするのは無理であろう。

1.1. 運送人の多様性

船舶による輸送の場合、必ずしもこうした私的契約の当事者が"運送人"になる訳では無い。例えば日本の代表的な外航船杜である川崎汽船、大阪商船三井船舶、日本郵船と雖も自己保有船によって運送する場合は少ない。類型化して言えば、コンテナ船による輸送ではコンソーシアム方式による他船社船輸送(それが傭船である場合も多々ある)が多く、在来船、不定期船では傭船による輸送が多い。

コンソーシアムは例えばマースク・ラインとシーランド、HL/P&ONL/NYK/OOCL/MISC(Grand Alliance)、MOL/HMM/APL(New World Allience)、COSCO/KL/Yang MingとHanjin/Cho Yang/UASC(United Alliance)である。

こうした非自社保有船による輸送の場合に誰が"運送人"であるかは単純では無い。船社により異なるが、自社が運送人である事を否定してas agent for the carrierとして発行している場合もあれば自社が運送人であると規定している場合もある。(注10参照)

実際に誰が運送人か、と言う問題は単に使用している船荷証券フォームだけでは無く、諸点を考慮して決定されるのであろうが、何れにせよ、こうした当該契約船杜以外の船主、傭船者までを私的契約で拘束するのは不可能であろうし、当事者となることを承諾した運送人に限定する場合、船積予約をする場合に当事者か否かを確認する方法が必要となろう。

 

 

 

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