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2 EDI網の拡大とEC

サプライチェーンが拡大すると、関係者の間でのデータの授受が重要となってくる。すなわちメーカーや販社は入出庫指図や運送指示情報を送り、物流データを運送業者や倉庫業者から受け取る。

電子的なデータ交換が始まる前は、指示情報は電話、FAX、郵便で送り、同様の方法で完了報告情報を受け取っていた。この方法では自分の業務を処理する前に、受け取った情報をコンピューターに入力する必要がある。迅速な処理を要求される場合には不向きだし、人間が介在することによって費用と誤りが発生する危険が増す。

そこで電子的なデータを交換することになったが、ここで問題が生じた。電子データを交換する前提は、情報交換を行う双方がコンピューターシステムを保持していることであるが、現在のようなERPソフトが発達する以前は、各社が手作りの(自社固有の)システムを構築していたので、相互のデータにはまったく互換性がなかったのである。

互換性とは、物理的通信手順等を同一とした場合、送受信データの中身、すなわちデータ要素(ひとつひとつの項目の長さ、意味、コード等)、とデータの構造(項目の並べ順、明細項目等の繰り返し回数等)である。

電子データ交換の初期段階では、支配力の強い大企業が自社の情報システムを中心として「標準」を作っていったため、複数の巨大企業と情報交換を行うためには、それぞれの相手企業に合わせてコンピュータの機種、通信回線、データ内容を整備する必要があった。これが多端末現象と呼ばれた。

その後、業界ごと、あるいは国ごとに標準化作業が進められたが、現在は国連経済社会理事会の下にCEFACTが組織され、世界的な標準化(UN/EDIFACT)が行われている。ここでは、標準化が済んだ電子データ交換をEDIと呼ぼうと思う。これら電子データ交換の歴史、UN/EDIFACTの現状、電子商取引の法的問題、技術的問題等についての入門書としては「図解よくわかるEDI」(朝岡、伊東、鹿島、菅又著、98年8月日刊工業新聞社刊)を参照願いたい。

一方、最近は電子商取引(Electronic Commerce、EC)が進展するので、標準化とかEDIは最早無用の長物となった、という人がいる。彼らは、ECをどのように捉えているのであろうか。インターネットを利用した電子モール(仮想商店街、バーチャルモール)で個人が買い物をする、これもECである。確かにここでは多くの場合、企業が勝手に作成した購買用の書式に消費者が記入することで商談が成立している。

 

 

 

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