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2) ICO

2000年サービス開始予定のICOは、元々1991年9月にインマルサットP(Personal)システムとしてスタートした。現在は民間活力導入を目的にインマルサットから分離、51カ国60事業体が出資している。(98年6月現在)

ICOは、10390km上の中軌道に周回衛星を配置するため、低軌道のイリジウムに比べ、はるかに少ない10機の衛星で地球全域をカバーする。音声遅延は0.27秒(イリジウムは0.20秒)である。衛星間通信によって地上側の負担を減らしたイリジウムとは逆に、光ファイバー網で結ぶ地上局連携で衛星の作業量を減らした。

また、ICOは衛星間通信を行わない分、衛星を高出力化し、これにより地上で使うデュアルモード携帯端末の低出力・軽量化を図る。連続待ち受け80時間(イリジウムは24時間)、連続通話4時間(同約100分)の性能で、重さ220gの端末の利用を計画している。またページャーも内蔵(イリジウムは別端末)のうえ、端末価格をイリジウムの約半額の20万円に抑え、通話料金も1分$3ほどに設定する予定である。端末はNECや松下電器などの日本メーカの主体で製造される。

日本でサービスを行うのは日本衛星電話株式会社であるが、同社には国際電信電話(KDD)、日本テレコム、日本移動通信(IDO)、NTT移動通信網(NTT-docomo)の通信事業者をはじめ計26事業体が出資している。

 

3) グローバルスター

欧米を中心に開発が進むグローバルスターは、イリジウムとICOの中間高度1414kmの低軌道衛星を48機使用する。

グローバルスターは、音質に優れるCDMA方式を採用した通話やファクス、データ通信などのほか、位置情報もサービスに含む予定である。他社は1機の衛星を対象に通信を行うが、グローバルスターの場合はGPSのようにユーザの視界(水平線上)に約3機の衛星がある状態を保って、建物など衛星との間の電波を遮る障害物をできるだけ回避する方式を採用している。また端末価格を、ICOを下回る$750に抑える低価格化を強く打ち出している。端末は米クァルコム社が中心に製造している。通信方式は、デュアルモードに加えて同国で普及している携帯・自動車電話のAMPS方式や、新しいCDMA方式の地上系と、衛星通信の3モードを備える端末などが計画されている。他社に比べて、すでに地上系移動体通信インフラが整備されている地域に重きを置いているところに特色がある。

注) 1] CDMA方式:(Code Division multiple Access)

符号分割多元接続。各チャネルの信号に符号化処理を施して区別できるようにして多元接続を実現する方式。元のチャネルの帯域幅が10〜1000倍に広がるように符号化する。米TIA(電機通信工業会)はCDMA方式のデジタル携帯電話サービスの標準「IS-95」を定めた。

2] AMPS方式:(Advanced Mobile Phone Service)

米国の自動車/携帯電話のアナログ方式の標準

 

 

 

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