1. 調査概要
本調査は、平成10年度から3ヶ年の計画で実施する「海上起重事業等の情報システムに関する調査」(以下「本調査」という)のうち、平成10年度の研究成果について報告するものであり、その概要は以下のとおりである。
1.1 調査目的
大交流時代と言われている世界貿易の流れのなかで我が国の港湾整備は、社会的な要請に対応しながら着実に進められ、港湾・海洋施設の建設にあたっては、海上工事を受け持つ多くの作業船団等の活躍により、安全を確保し、安価で品質の高い施設築造を行っている。
この作業船団の運行管理は、管理部門、現場部門等でそれぞれの担当者が経験的知識、通信情報等で判断し、直接またはFAX、電話等で指示・協議を繰り返し行い最終決定をしているが、時間のロス、情報の不足、連絡体制の不備等は避けられない状態にある。
昨今の新聞/雑誌記事などによると、パソコンの世帯普及率は約20%との調査結果が掲載されており、企業においてはさらに高い普及率を示すものと考えられる。また、建設省、運輸省等の公共事業担当部署では、パソコンによる情報通信を始めており、工事の発注情報、現説・入札案内、契約等の設計図書等の情報を公開している。さらに運輸省港湾局では、港湾整備事業における品質の確保・向上、事業執行の省力化・合理化、生産性の向上等を図るために港湾CALSの導入を進めており、各地域でパイロット事業を実施して平成16年(2004年)に本格的な港湾整備事業支援総合情報システムを実現させる予定で、世の中の流れは急速に情報化へと向かっていると考えられる。
産業界においてもこの様な世の中の流れに逆らうことなく情報通信技術を活用した管理業務の効率化への取り組みが積極的に行われている。建設分野においても、公共事業等のコストダウンを図るために調査・研究が真剣に進められており、建設プロジェクトの設計から維持・管理まで、ライフサイクル全体におけるトータルコストの削減を課題に新しい競争の時代が始まっている。
この様なことから社団法人日本海上起重技術協会(以下「当協会」という)では、平成9年度に海上起重事業の情報システム構築に関するアンケート調査を会員企業に実施した。その結果として早急に「作業船運行管理情報システム」を構築する要望が数多く出された。当協会ではこれを柱に、海上作業に関わる多方面からの情報、現地の作業状況、自然条件等の情報を網羅した海上起重事業等の情報システムの構築を平成10年度より3ヶ年計画で実施し、これを企業内で有効に活用し、情報化社会に対応した海上起重事業等の近代化を図ることによって、工事のコスト縮減、作業の安全、品質の管理、施工技術の向上に寄与する意向である。