第三章 鉄道
1. 鉄道輸送の環境
中国鉄道は国家が定めた輸送計画貨物を、計画通りに輸送する働きを担い、計画経済体制の下では輸送モードの中核を占めていた。
中国は石炭等の基礎資材は内陸に存在し、消費地は沿海部に集積しているため「北炭南運」「西炭東運」といわれる物流が重要であり、この輸送が鉄道輸送の大きな使命であった。事実、鉄道輸送量の8割を占めるのが石炭、鉄鋼、鉱石といった基礎物資と化学肥料や穀物といったものである。
また、工業製品等付加価値の高い品目は上海、天津といった沿海部から内陸部へ輸送されるため、内陸と沿海を双方向に結ぶ長距離輸送は、鉄道輸送の大きな役割であった。
鉄道輸送はトンキロベースで80年代半ばまで首位の座にあったが、85年を境に内航海運が首位の座を占めるようになった。また、自動車輸送の進展も急であり、トンベースでみると、すでに鉄道輸送は自動車輸送に大きく水をあけられており、輸送量格差は拡大しつつある。特に、自動車輸送の伸びに比較して鉄道輸送の伸びが低い傾向があり、その原因として供給能力の不足があげられてきた。
例えば、ハード面でみると、複線化率が25%程度と低く、また電化率も20%未満に過ぎず、輸送能力が低いことが指摘されてきた。事実、開放経済の実施以降、経済発展の地域間不均衡が深刻化し、特に沿海地域の経済発展による貨物需要が著しく華東・華南発着の鉄道輸送はタイトな状況となった。
中国側も鉄道輸送の充実には大きな投資を傾け、インフラの充実等、輸送能力の充実に努力している。