そういう訳で、cuttingsを20mおきに採取致しまして、その多成分分析を行ったものです。これは、Si02、A1203、Fe、Mgという主成分元素でございますが、これで見ますと、この坑跡というのは、大きくは、深い方は花崗岩質であるという事、(そして、さらに最上部は、ディサイト質(石英安山岩)であるという事がわかります。これは、その間に狭って来る堆積岩も含めて、こういうもののre-workした堆積物だという風に考えられます。
(FIG-13)
このWD1-A井を有名にしたのは、この温度プロファイルでございます。もちろん浅い方は、充分温度検層は出来ております。しかしながら、深い方につきましては予想外に高温であったために、例えば、この伝統的なクスター温度計で測りました所、414℃迄は測れましたが、それ以上高温にあると温度計が働きませんでした。という訳で、こういうモノに関しましては、幾つかの低い温度段階でのモノからホーナー法という平衡温度を計算する手法でもって、平衡温度を計算したりしております。それから、それだけでは不充分であるので、例えば、ここに小さな丸で結んでおりますが、これは、岩石中の主として石英中の流体包有物を用いて、その均質化温度を測定したものです。
これも、ほぼ最近の温度条件を表すと考えられますので、これも一応地層温度として使えます。それから、さらに決定的な証拠を得るために融点温度の分かった合金を幾つか使いました。
500℃前後で、500℃のものは溶け、510℃のものは溶けなかったという例でございますけれど、いずれにしましても、こういった断片的な温度情報を、余りにも温度が高かったために、こう言ったものを結び合わせて最終的に得られたのが、このような網状の太線で書いた、これが、おおまかな温度プロファイルでございます。
もちろん、あらゆる情報が坑底では、少なくとも500℃を超えている事を示しておりまして、これは、先程のキラウエアの実験井を除きますと、地熱井という意味では、イタリアのメンテアミアダでエネルが掘削した4000m井がありまして、これの坑底温度でございます。それから、この温度カーブを見ますと3100m、380℃の所に変曲点がございます。これより、浅い方は、基本的にはボーリング・カーブといいますが、沸騰点曲線に規制されております。それに対して、これを超えますと急激に温度が立ち上がってまいります。という訳で、この変曲点の意味付けでございますけれど、これにつきましては、例えば、ファーニエ1991などが、テクトエクスにactiveな地域では花崗岩質の岩石というのは、大体370℃から500℃の間で、脆性-塑性境界に達するという風に指摘しております。この380℃という温度は、まさに、その範囲に入るものでして、これにつきましては、次の様に解釈できるかと思います。つまり、この温度が、この点が、さまに脆性-塑性境界に当たっていて、そして、これより下は、plastic(可塑性)になっている為に断裂が出来ます。その為に透水性がなく、そして、熱水対流が起こらない。その為に、温度が立ち上がって伝導的になっているという風に考えられます。
(FIG-14)
これは、ただ今の事を断面図上に見たものです。
(FIG-15)
少し、割れ目について、断裂について触れてみたいと思います。
ここに網目で示した線は、逸泥帯を示しております。逸泥帯というのは、掘削中に泥水が逃げた所、つまり、透水性の高い、割れ目の位置を示しております。それで、こちら側には、先程申し上げました、cuttingsの多成分分析の結果を示しております。これらの成分というのは、主に、割れ目を指示しやすい成分を示しております。例えば、カルシウムとイオンが、highのアノーマリーを成している。これは、アンハイドライトが、ベイン(脈)を成している所でございます。それから、例えば、カルシウムとCO2が、アノーマリーを成しているが、これは、方解石、カルサイトが、ベイン(脈)を成しているという様な事も読み取れます。そして、それらが、この逸泥帯と良く一致しております。