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つまりガスハイドレート、メタンハイドレートは非常に効率的なガスリザーバー(ガス溜まり)であると言うことが言えます。これがメタンハイドレートの第一の特徴です。

 

(FIG.-5)

次にメタンハイドレートはどういう場所で出来るのか、という事ですが。

地球表層で地球環境の中でどういう場所で見れるかと言うと、それはメタンハイドレートは低温で且つ高圧な状態で安定に存在しますので、左図の横軸はこれは温度で0℃から25℃までを示していまして、縦軸は上から下へ向かって上がる方向で圧力を示してあります。ただしここでは圧力は気圧ではなくて海面からの深度、上が海面sea surfaceでそれから下へ向かって水深という風に読んで頂きたいと思います。従って一番下が4000m、400気圧と言う事になる訳です。この中で赤い線で示したのがメタンハイドレートのスタビリティ・カーブphase boundaryで 左下の低温でより高圧なところがメタンハイドレートが安定に存在し、右上の部分がメタンハイドレートがメタンガスと水に分解してしまうと言う事であります。この条件は、それ程大きな、非常に低温でも非常に高圧でもなくて、mildに低温、低圧であります。従ってメタンハイドレートは、深海底の堆積物、あるいは永久凍土の中で生成する訳です。

このカーブを横切ることに拠って、ガス+水がメタンハイドレートとして固定されるか、あるいは個体のメタンハイドレートが、ガス+水に分解するか、と言う事を示す訳で、圧力変化に対して非常にsensitiveな性質を持っている、これがメタンハイドレートの第2の特徴と言えます。

 

(FIG.-5)及び(FIG.-6)

で、それではメタンハイドレートがどういう風に産するのか、天然では、どういう所に存在するのか、と言う事を、海洋堆積物中での分布という事でお話致しますが、左の図で破線で示しましたのは、水温を模式的に表わしたものでありまして表層水を20℃とし、深層水、中層水が数℃、500-600mの位で3℃〜4℃位に安定すると言う中緯度に於ける水温プロファイルを模式的に書いたものですけれども。そうしますと、この場合、水深約450m付近で水温と圧力のカーブが、赤いハイドレートStabilityカーブを横切る訳です。つまりこの事は、水深400m、あるいは500mの所の堆積物はハイドレート・スタビリティーゾーンに入る。それより浅い所は入らない。つまり、ハイドレートが分布する上限深度というのが400m〜500m位であるという事が、先ず1つ言えます。次にこの左の図では2500mの所に、sea floorと書いてありますが、今、仮に水深2500mと言う場所を考えてみますと、もちろんその場所は充分にメタンハイドレートの安定領域に入っている訳です。

ポイントAは、ハイドレート・スタビリティーゾーンに入っています。ただ、堆積物の中に入りますと、あとはここに書いております様に温度が上昇します。これをthermal gradient(地温勾配)に従って温度が上がって行く訳ですが、今この左の図で1kmで30℃上がると、30℃/kmという標準的な地温勾配を想定しますと、堆積物の温度は海底(=sea floor)から約600mの所で再びハイドレートのスタビリティー・カーブを横切ってしまう。つまり海底下600mより下では、再びハイドレートはメタン+水に分解してしまう。で、ハイドレートが存在しうるのは、海底下から600m迄の所という事になる訳です。そこの深度をBase of Gas-Hydrate stabilityと言ってBGHSという風に呼んでいます。

このBGHSはこの図からすぐ分かります様に、温度勾配が緩ければ厚くなりますし、温度勾配が高ければ、それは薄くなる訳です。

それからもう1つ赤く示したstability curveの形から分かりますように、水深が浅いところでは温度勾配が同じであっても薄くなってしまう、と言う事で、水深と地温勾配、この2つが、ハイドレートが安定に存在しうる地層の厚さを決定していると言う事になります。

それから、ここには示せませんが、このハイドレート・スタビリティーのBGHSの直下にはしばしばフリーガスが存在する。つまりそれより下ではそれより上でハイドレートであったものがそれより下に行きますと、分解してガス+水になりますからBGHSより下ではフリーガスが存在する可能性がしばしばあり、又、それは実際にも確認されています。

それからもう1つ、これは今まではverticalな分布ですけれど、水平的な分布という点で言いますと、これはハイドレートを作るメタンのソースがどれ位充分にあるかと言う事に絡んできましてビスタル・プレインの4000mと5000mという所では元々、有機物が少ないですから、そういう所では先ずハイドレートは存在していないで、大陸あるいは遠方から有機物が供給される大陸斜面、大陸棚、continental riseといった大陸周辺でハイドレートが生成するという事です。従って一番ハイドレートが多いという所は、水深1500m〜3000m位の堆積物という事が分かって来ます。

 

 

 

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