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太平洋にはマントル内でのスーパープルームの上昇による巨大火成活動によって形成された巨大海台が多数存在しています。この巨大海台を貫く掘削を行うことによって、マントル深部の組成およびダイナミクスについての理解が深められます。

 

(4) 地殻内生命

極限環境で生きる微生物が次々と発見され、地殻内にも微生物が広く生息すると考えられています。120〜130℃と予想される微生物の生息範囲は海底下4000mにも及びます。地殻内生物圏の広がりを知るにはライザー掘削が必要なのです。

DNA解析による進化系統樹から真核生物、真正細菌(原核生物)、古細菌の共通祖先の存在が予想されていますが、まだ見つかっていません。系統樹の根本近くに好熱菌が多いことから、共通祖先が好熱菌である可能性が指摘されています。また、最も増殖する圧力と採取場所の圧力が異なる好熱菌が発見されており、熱水活動域の地殻深部を起源とする可能性もあり、深海掘削による解明が必要です。

 

(5) ガスハイドレートの成因と安定性

1000m以深の大陸斜面にガスハイドレートの層とその下にフリーガス層が大量に存在することが知られてきました。未知の巨大な炭素シンクとしての炭素循環システムにおける位置付け、地殻内生命との関係、崩壊した場合の環境への影響などを解明するには炭化水素存在域での掘削が可能なライザー掘削が必要です。

ガスハイドレート層の崩壊メカニズムとして、寒冷化による海面の低下、又は、温暖化による海底付近の水温上昇などが考えられており、崩壊した場合には大規模な海底地滑り、大気への温暖化ガスの大量放出や海中の酸素欠乏等の環境変動を招く恐れがあることが指摘されております。

 

(6) 深海における先進的技術開発の波及効果

大深度ライザー掘削船の開発は、厳しい海象条件下での位置保持技術、過酷な条件に耐えるライザーの開発及び長大なパイプの運用技術などを通じて、深層水利用/温度差発電、海底鉱物資源採取(熱水鉱床、コバルトクラスト、マンガン団塊等)、ニ酸化炭素海底貯蔵、深海での重作業技術などへの波及効果が期待されます。また、海底下大深度の掘削及び計測技術は、高温高圧下の計測技術、地熱利用等への波及効果も期待されます。

 

 

 

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