”なぜ、地球を掘るのか?”
東京大学海洋研究所
平朝彦教授
(講演者紹介)
東京大学、海洋研究所、堆積学部門の教授で、なおかつ先程紹介がございましたが、現在のODPの日本代表の第一人者そして将来の国際的なOcean Drilling Programに於いても、活躍されると我々が願っております。平 朝彦先生にご講演をお願い致します。 ”なぜ、地球を掘るのか?” 宜しくお願いいたします。
(講演者)
只今ご紹介頂きました、東大海洋研究所の平です。
私は、15年間、国際深海掘削計画の推進に関わってまいりました。その間、南海トラフを掘削したり、日本周辺の計画に携わったりといろんな活動に関わって来ましたけれども、地球を掘ると言うことが如何に我々の自然観の推進にとって重要であるかを身にしみて感じて来た訳です。
今回このOD21と言う計画が日本で始まる事になりまして、日本がリーダーシップを取りながら国際的な計画を推進出来ると言う事は我々にとって大変な喜びである、と同時に大変な責任も感じると言う次第であります。
今日、お話するのは、我々の自然観、地球観の推進に掘削と言うものがどう言う関わりがあるのか、どう言う貢献が出来るのかと言う事を、1つの例、白亜紀の世界を知ると言う事に関してお話したいと思います。
(FIG.-1)
地球を知ると言う事は、今Sean Solomon先生がお話になった様に、地球の非常に複雑なシステムを理解すると言う事に他なりません。地球は、固体地球、それから大気・海洋圏、それから外側を取り巻く磁気圏、それから生物圏、そして我々も1つの人類圏と言う大きな地球のシステムの中の1つの要素として生きている。これらが非常に複雑に相互作用しながら地球と言う1つのシステムを作っている訳ですが、そのシステムは実は地球の誕生以来ずっと時間方向に逆戻りする事が出来ない、1つの分科、あるいは物事が分かれて行ったり、それから物事が変位して行く様なそう言うシステムを作って来た訳です。ですから、我々は過去に映画と違って逆戻りする事が出来ません。そして、人類は今地球の中で非常に大きな営みをして地球を変えている、そう言う時代になってきました。従って、地球科学はその地球のシステム、人類圏も含めた地球システムの本質を理解して、人類の将来に対してある指針を与える役割を担っている非常にクリテイカルなステージに我々が居ると言う風に認識する事が出来ます。
(FIG.-2)
それでは、この様な地球科学の課題に対して掘削、地球を掘る事、深海掘削はその代表的なものですけれども、それも含めて、地球を掘る事がどう言う意味があるのか、どう言う目的を持ってするのか、と言う事ですけれども、それは3つあります。
1つは、地層を、あるいは氷であったりしますが、ともかく地球の表層にある様々な岩石や氷やそう言うものに残された地球活動の記録を掘り出して、これを解読し、それから地球や生物の歴史を、今まである地球システムがずっと時間方向に進化して来たと言う事を言いましたけれども、その歴史を復元すること、これが1つの大きな目的であります。