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基調講演 地球:生ける惑星
カーネギー大学地球電磁気学部長
ショーン・ソロモン
我々が住む惑星地球は、太陽系の中でも最もダイナミックで複雑であり、そして最も美しい。地球は、表面が大洋で覆われる唯一の惑星であり、巨大な山脈がくまなく波打つ唯一の惑星、そして生命の宿る唯一の惑星でもある。そして、惑星上の数ある生命体の中に、自分たちの住んでいる惑星の仕組みを理解し、惑星の活動に一部手を加えることすらできる生命体が存在するのは、地球だけである。そのことは、我々が今こうしてOD21フォーラムを開催していることからも明らかである。
地球科学者達は、大気圏、水圏、固体惑星、そして生物圏が互いに関連し合い、多くの異なった規模の時間スケールで活動する、複雑で多種の非線形システムを通して進化するということを、主に過去20年間で認識するようになった。海洋と大気の複合システムは、激しい嵐からエルニーニョ現象、そして気候や地球規模温度の長期的変化までを含む諸現象を支配する。固体惑星は、過去の気候の良好な記録が堆積物や氷床に含まれ、また大気の放射バランスを変動させる火山性物質や塵の源にもなっている。地球深部ダイナミクスの現れであるプレートテクトニクス運動は、巨大地震や火山爆発のような世界規模の現象を支配する。生物圏はその環境から影響を受け、そして影響を与え、その規模はごくローカルなものから広い地域、さらには地球規模にまで広がる。
我が惑星の大規模な変動現象間の相互作用は、新生の研究分野であり、地球システム科学と呼ばれるが、一般にはまだ殆ど知られていない。というのは地球システム科学において作成される数値モデルの精度が十分ではなく、実際の複雑な自然現象をうまく表現するに至っていないからである。しかしまた、こうした自然現象がいかにして機能しているかに関する情報が不足していることも事実だ。この惑星のしくみに関する新たなそして重要な情報の発見が最も期待される最前線は、惑星を覆う大洋の底にある地殻である。
例えば、現在そして地質学的過去に於ける、気候と海水準の変動を支配するしくみを理解することは、地球の複雑なシステムの殆ど全ての機能を関連付ける重大な意義を持つと言える。そのような過去の変化の最も完璧な記録は、地球の海底の堆積物に閉じこめられており、採集され分析されるのを待っているのである。
大規模な地震と同時に起きる地殻変動、地震後に起きる変動、そして最も重要な地震前に起きる変動、これら一連の変動現象は地震学の中でも最も重要な研究課題であるが、地球上の最も大きな地震が海洋底で起きているという事実が、この分野の発展を遅らせている。