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人類はきわめて重大な1世紀の終わりにいます。

この1世紀は科学技術発達の世紀でした。

この1世紀はライフスタイルの想像を絶する変化のそして生活の道具を生んだ世紀でありました。

そしてこの1世紀は健康向上、長寿、人口増加の大きな飛躍を生んだ世紀でもありました。

 

今、こうした変遷が自らの軋轢になり始めているという事実に直面しています。

 

世界はまだ人口の許容限界には達していませんし食料や天然資源が枯渇状態に達したわけでもありません。しかし無尽蔵の資源は存在せず、またもう千年いや百年でさえも無秩序な成長はあり得ないという認識を我々は持つに至りました。

 

残念ながら自己破壊の手段は存在し、近代戦争に於ける兵器にそれを見いだすことができます。そして人類が陸、大気、生物圏そして海洋を酷使してきたことにより潜在的な下降線(もしそれが文明の崩壊でなければ)が我々を取り巻くであろうという現実認識にも至っています。

 

1950年以来地球に関する政策課程の大きな変革を我々は見ました。

 

我々の生存期間中には国家間の平和に向かう特筆すべき協調を目の当たりにしましたが、アースサミットでの国家間の同調も同じく特筆すべきものでありましたし、それに続いて将来の我々を取り巻く環境を守って行くという目標を定めて会議が開催されています。

 

新たな千年の始まりに際する今、我々は人類とそれを取り巻く環境の運命について熟考しなければならないのです。

 

人類の望み、ライフスタイルそしてもちろん消費の規模とパターンに関する変革を我々は考えなければなりません。アースサミットの議論における最も冷静な判断が下される場に於いてでさえ、環境の余命は数十年から1世紀といった時間尺度を越えることはないという話でした。本フォーラムの2日間に渡り我々は数千年から数十万年に及ぶ地球変動の周期の話に耳が慣らされて参りましたが、我々の通常の生活に於いて人類や地球の現実的に理解できる期間に於けるたとえつかの間の進化も経験することはできません。21世紀の人々は後に続く者がより少ない恩恵にしかあずかれないような形でこの地球から収穫を得るような人間であってはならないのです。

 

人類は長期的な意味で生き残るためにテクノロジーに潜在的に依存していくでしょう。

 

そのときライフスタイルやテクノロジーの応用に関する変化は地球への深い理解の基で考慮しなければなりません。昨日から今日に掛け多くの有能な講演者達が科学的考察によるすばらしいメッセージを我々に伝えてくれたわけでありますが、そのメッセージよりもさらに強いインパクトをもって伝わってきたのは我々の惑星に対する理解がいかに不十分であるかという現実です。我々は益々悪化する状況の中でも我々の知識を広げて行く努力を怠ってはなりません。

 

気象学と海洋学からの経験は我々に大気や海洋について表面だけの観察によって理解することができないことを教えてくれました。大気と海洋の全厚さにおける垂直方向の標本と観測が理解する上でなくてはならないものだということが証明されました。

 

個体の地球に関しても同じ事が言えます。それは同じ理由から、そしてもう一つこれからお話しする別の理由から言えることなのです。

 

 

 

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