物を発見しその性質を解明したからといって新薬の開発につながるとも断言できない。それでもなお、次のようなことは強く、はっきりと言うことができる。すなわち本計画で行われる先端的基礎研究は、我々の環境に対する知識、そして物理、化学、生物の各分野を支配している自然法則への理解を深めてくれる。このような研究は我々の経済および社会福祉にとって最良の投資の1つである。
3. 技術的妥当性
本計画により現行の技術より優れた掘削が実現すると認められるか。
またその実現により、ライザー掘削技術を採用する価値があると言えるか。
A. (前段)認められる。(後段)そう言える。
ライザー技術によって掘削深度の増大、掘削孔の安定性の向上、埋没したライザーレス掘削孔の再利用が実現することは、多くの調査結果および報告書から明らかである。科学界が、2003年以降の深海掘削はライザーレス船およびOD21のライザー船の2船体制で行われるべきであると提唱してきているのは、科学目標だけでなくこういう理由もある。
当初の2,500mシステムの完成後、4,000mシステムに移る必要性が認められるか。
A. 認められる。
OD21およびIODPの科学目標の多くは、4,000mライザーシステムの段階まで技術開発が進んで初めて達成されるものである。例えば海洋地殻を貫通してマントルまで到達し、地球深部が不断の活動を行っている証拠として岩石サンプルを採取するというようなことは、4,000mライザーシステム抜きには実行し得ないことである。
4. 本計画の研究開発の効率性について
(1)技術開発が系統立って効率的に進められるよう計画されていると認められるか。
本項目は私の専門外であるが、ライザーシステムをフェーズAおよびフェーズBの2段階に分けて開発すること、フェーズBに移行するときに掘削船の改造が最小限で済むように、掘削船の大きさを4,000mライザーシステムが搭載できるよう設計していることについては合理的であるとの印象を受けた。また適度に従来路線を踏襲しつつも、技術開発に関しては明らかに野心的かつ意欲的な計画であるということは言える。