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(2)研究体制

本委員会は、研究体制の整備が本計画の正否を左右する最も重要かつ困難な課題であると考える。

研究体制については、まず、本委員会から、二船体制のもとで増大する研究者の乗船機会に見合うだけの研究者層が日本にあるのか、日本の研究者による研究成果の増大が期待できるのか、との懸念が表明された。このため、複数の専門家からの説明を聴取する等、本委員会として相当の時間を費やして議論を重ねた。その結果、現時点においても、機会さえ与えられれば本計画に参画する可能性の高い研究者が多数存在すること、さらには十分な研究成果が上げられるよう大学関係者等の間でこうした研究者を組織化するための取り組みが進行していること等が認識された。その上で、本委員会としては、効果的な研究体制の整備、人材の養成等の重要性に鑑み、関係諸機関が、以下の努力を払うことが重要と考える。

すなわち、この問題については、計画提案者だけでなく、国内の関係省庁、大学、試験研究機関等の全体で取り組むべきものであるため、計画提案者は、地球深部探査船の完成までに関係機関と協力し、より多くの研究者を結集することのできる研究体制の整備について最大限の努力を払うべきである。

本計画のもとで日本が研究面で十分な成果を上げるためには、掘削船の運用とプロジェクト推進の中核となる研究拠点と、多様な発想で掘削試料や計測データから研究成果を産み出す多数の分散した小規模の研究グループとが連携し、相互に牽引しあう研究体制を整備するなどの取り組みが必要と考える。同時に、研究管理及び研究支援についても、組織の整備、人材の養成とともに、若手研究者への支援、関連陸上施設の設置など十分な措置を、地球深部探査船の完成までに講じるべきである。

 

3.2.5 費用対効果

科学目的の計画によって将来どれだけの社会・経済的効果が生じるかについて、確度の高い数値を導くことは現時点では困難なことである。したがって、本計画のように第一義的に科学目的の計画の費用対効果を論じる事は余り意義のある事ではないと思われる。それを前提として、計画提案者が示した気候変動に関する効果の試算を検討し、また、本計画の科学的成果は、そのほかにも多くの効果をもたらすと考えられること、中でも本計画の成果が地震による被害の軽減に貢献する可能性を持っていることを考え、本委員会としては、本計画の効果は、地球深部探査船の建造・運用等に投入する費用に比べて十分に大きいものと推定している。

さらに、本計画の実現によって初めて到達することができる未踏の領域での掘削や、全球的な古環境復元等の効果もある。

以上の点に加え、本計画は、日本が21世紀における役割を踏まえ、かつてない規模で新しい科学の開拓に主導的に取り組むものである。それが新しい学問領域を切り開き、新しい研究体制を確立していく努力と相まって、若い研究者や次世代の人々が研究や開発に対する夢を育むことのできる新たな活躍の場が作られる効果が大きい。また、日本の科学技術領域での活動に対する国際的評価が一段と高まるという効果も認められる。

 

 

 

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